結論:発信機・地区音響装置・表示灯は「人が知らせる・人に知らせる」ための機器
結論から言います。
自火報のシステムは、感知器が「自動で」火災を見つけるだけではありません。人が手動で通報する手段と、建物にいる全員に知らせる手段も備えています。
それが発信機・地区音響装置・表示灯の3つです。
甲種4類の試験では、P型1級と2級の違い、地区音響装置の音圧基準、区分鳴動のしくみが頻出です。
発信機 ― 人が手動で火災を通報するボタン
発信機は、人が火災を発見したときに手で押して受信機に火災信号を送る装置です。廊下や階段の踊り場でよく見かける赤いボタンがこれです。
感知器が自動で火災を検出する前に、人が先に気づくこともあります。そんなとき、「火事だ!」と声を上げるだけでなく、発信機を押せば自火報のシステム全体が動き出すのです。
P型1級発信機とP型2級発信機
発信機にはP型1級とP型2級の2種類があります。この違いは試験で必ず出ます。
応答確認灯とは?
P型1級発信機には、ボタンを押した後に応答確認灯が点灯する機能があります。これは受信機側が信号を受け取ったことを示す「応答」です。
発信機を押した人からすると、「ちゃんと伝わったのかな?」と不安になりますよね。応答確認灯が光ることで、「受信機に信号が届いた」ということが確認できるのです。
電話ジャックとは?
P型1級発信機には電話ジャックが付いています。ここに送受話器(電話機)を接続すると、受信機がある防災センターと直接通話できます。
「5階の東側廊下で煙が出ている」といった詳しい状況を音声で伝えられるのが大きなメリットです。大規模な建物ほどこの通話機能が重要になります。
発信機の構造
発信機の基本構造を整理します。
→ 保護板(透明カバー)を押し破る or 持ち上げて押すタイプがある
応答確認灯(1級のみ):受信機が応答すると点灯する赤色LED
電話ジャック(1級のみ):送受話器を差し込んで受信機と通話
復旧方法:専用の鍵で前面カバーを開けてリセット
→ いたずら防止のため、一般の人が簡単に復旧できない構造
地区音響装置 ― 建物にいる全員に音で知らせる
地区音響装置は、火災が発生したことを音で建物の人全員に知らせる装置です。受信機が火災信号を受けると、地区音響装置に鳴動の指令を出します。
音響装置の種類
音圧レベルの基準
地区音響装置の音は、小さすぎたら聞こえません。そのため音圧レベルの基準が定められています。
- 1m離れた位置で90dB以上(ベル・サイレンの場合)
- 1m離れた位置で92dB以上(音声警報装置の場合)
90dBってどのくらい?
90dBは犬の鳴き声や大声での会話くらいの音量です。かなりうるさく感じるレベルで、「聞こえなかった」ということはまずありません。音声警報が92dBと少し高いのは、音声は単調な音より聞き取りにくい場合があるためです。
区分鳴動と一斉鳴動
地区音響装置の鳴らし方には、区分鳴動と一斉鳴動の2つの方式があります。これは試験の頻出ポイントです。
なぜ区分鳴動があるのか?
大規模なビルで火災信号が入ったとき、いきなり全館のベルを鳴らすと全フロアの人が一斉にパニックになる恐れがあります。エレベーターに殺到したり、非常階段で将棋倒しが起きたりする危険があるのです。
区分鳴動では、まず最も危険な出火階とその直上階(煙は上に行くため)だけを鳴らし、その人たちを優先的に避難させます。その後、一定時間が経つか、受信機で操作すると全館鳴動に切り替わります。
重要:区分鳴動を採用する場合でも、一定時間経過後は必ず全館一斉鳴動に移行します。出火階だけ鳴らして終わりではありません。
表示灯 ― 発信機の場所を示す赤いランプ
表示灯は、発信機の設置場所を知らせるための赤色の灯火です。発信機の直近に取り付けられ、常時点灯しています。
なぜ表示灯が必要なのか?
火災が発生してパニック状態のとき、「発信機はどこだ?」と探し回る余裕はありません。煙で視界が悪い中でも、赤く光るランプが目に入れば発信機の場所がすぐわかります。
普段は「あの赤いランプは何だろう?」と気にしない人がほとんどですが、いざというとき最も頼りになるのがこの表示灯なのです。
表示灯の基準
- 色:赤色
- 点灯方式:常時点灯
- 視認距離:前方3m離れた位置から点灯が容易に識別できること
表示灯が消えていたり、汚れで見えにくくなっていたりすると、緊急時に発信機が見つけられません。だから常時点灯が原則で、点検時にも確認対象になります。
3つの機器はどうつながっているか
自火報の全体像で紹介した信号の流れの中で、この3つの機器がどこに位置するか整理しましょう。
→ 表示灯(赤ランプ)を目印に発信機へ向かう
▼
② 発信機のボタンを押す
→ 火災信号が受信機に送られる
▼
③ 受信機が火災を確認
→ 火災灯点灯・地区窓点灯・応答確認灯を返す(1級)
▼
④ 地区音響装置が鳴動
→ ベル・サイレンで建物全体に火災を周知!
▼
⑤ 電話ジャックで通話(1級)
→ 防災センターに「5階東側で煙が出ている」等を詳報
つまり、表示灯が発信機の場所を示し、発信機が通報手段を提供し、地区音響装置が全員に知らせる――この3つが連携して「人→機械→人」の通報チェーンを作っているのです。
P型1級・2級の使い分け
受信機の記事で学んだP型受信機の級別と、発信機の級別は対応しています。
| 受信機 | 発信機 | 建物の規模 |
|---|---|---|
| P型1級受信機 | P型1級発信機 | 大規模(応答確認・通話が必要) |
| P型2級受信機 | P型2級発信機 | 小規模(押すだけで十分) |
大規模な建物では、火災の現場にいる人が防災センターに詳しい状況を伝える手段が必要です。だからP型1級には電話ジャックと応答確認灯が付いています。
小規模な建物では、発信機を押せばすぐに全員が避難できるため、通話機能は不要です。シンプルなP型2級で十分対応できます。
全体のまとめ
P型1級:応答確認灯あり+電話ジャックあり → 大規模建物向け
P型2級:応答確認灯なし+電話ジャックなし → 小規模建物向け
地区音響装置:ベル・サイレン・音声で全館に火災を知らせる
音圧基準:1m離れて90dB以上(音声は92dB以上)
鳴動方式:一斉鳴動 or 区分鳴動(出火階+直上階→全館)
表示灯:発信機の位置を示す赤色灯・常時点灯・前方3mで識別可能
連携:表示灯で発見 → 発信機で通報 → 地区音響装置で周知
まとめ問題
問題1:P型1級発信機とP型2級発信機の違いに関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)P型1級には応答確認灯があるが、P型2級にはない
(2)P型2級には電話ジャックがあるが、P型1級にはない
(3)P型1級とP型2級の機能は同じで、サイズが異なるだけである
(4)P型2級には応答確認灯があり、P型1級にはない
問題2:地区音響装置の音圧レベルに関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)ベルの場合、1m離れた位置で70dB以上でなければならない
(2)音声警報装置の場合、1m離れた位置で90dB以上でなければならない
(3)ベルの場合、1m離れた位置で90dB以上でなければならない
(4)すべての地区音響装置は1m離れた位置で100dB以上でなければならない
問題3:区分鳴動に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)出火階のみを鳴動させ、他の階は鳴動させない方式である
(2)出火階と直上階を先に鳴動させ、一定時間後に全館鳴動に移行する方式である
(3)全フロアを同時に鳴動させる方式である
(4)出火階の直上階と直下階を鳴動させ、出火階は鳴動させない方式である
問題4:表示灯に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)表示灯は発信機の位置を示すための赤色の灯火である
(2)表示灯は火災発生時にのみ点灯する仕組みである
(3)表示灯は前方3m離れた位置から点灯が容易に識別できなければならない
(4)表示灯は発信機の直近に設置される
問題5(応用):次の建物のうち、P型1級発信機ではなくP型2級発信機で対応可能と考えられるものはどれか。
(1)地上20階建てのオフィスビル(防災センターあり)
(2)地上2階建ての小規模飲食店(収容人数50名)
(3)地上10階建てのホテル(客室数200室)
(4)地下2階・地上15階建ての複合商業施設