結論から言います
蓄圧式消火器の整備は、次の7ステップで進めます。
減圧 → 分解 → 内部確認・清掃 → 部品交換 → 薬剤充てん → 組立・加圧 → 気密試験
最大のポイントは「必ず減圧してから分解すること」。蓄圧式消火器は常に内部に圧力がかかっているため、減圧せずにキャップを外すとキャップが吹き飛ぶ重大事故につながります。
試験では「整備の手順」「加圧ガスの種類」「気密試験の方法」が頻出です。この記事で1ステップずつ確実に押さえていきましょう。
整備とは?――点検で見つけた不良を「直す」作業
まず「点検」と「整備」の違いを整理しておきます。
| 区分 | 目的 | 内容 |
|---|---|---|
| 点検 | 異常を見つける | 外観・機能・内部を確認 |
| 整備 | 異常を直す | 分解→修理→組立→試験 |
つまり、点検(外観点検・機能点検)で不良が見つかった消火器に対して行うのが「整備」です。整備の結果、消火器を正常な状態に戻すことがゴールになります。
蓄圧式消火器の整備フロー
全体の流れを図で確認しましょう。
それでは各ステップを詳しく見ていきましょう。
Step 1:減圧する――整備の大前提
蓄圧式消火器は、容器内に常時窒素ガス(N₂)の圧力がかかっています。指示圧力計の針が緑色の範囲を指している状態ですね。
この圧力を抜かずにキャップを外そうとすると、内部の圧力でキャップが勢いよく吹き飛びます。過去にはこれが原因で死亡事故も起きています。減圧は命を守るための最重要ステップです。
減圧の方法
| タイプ | 方法 |
|---|---|
| 排圧栓(はいあつせん)あり | 排圧栓を開いてガスを徐々に放出 |
| 排圧栓なし | 安全な場所でレバーを握り、薬剤とともに圧力を排出 |
どちらの方法でも、最後に指示圧力計の針がゼロを指していることを必ず確認します。
注意
Step 2:分解する
減圧を確認したら、分解に入ります。
分解の手順
- キャップを回して外す
――キャップには減圧孔(げんあつこう)があり、万が一残圧があってもゆっくり抜ける安全構造になっています。とはいえ油断せず、ゆっくり回しましょう。 - バルブ(放出弁)を引き抜く
――ホース・ノズルがバルブに接続されたまま、まとめて引き抜きます。 - サイホン管を抜き取る
――容器の底まで届いている細い管です。曲がらないようにまっすぐ引き抜きます。 - 消火薬剤を取り出す
――容器を逆さにして薬剤を別の容器に移します。粉末の場合は飛散に注意。
分解した部品は順番がわかるように並べておきます。組立時にパッキンの入れ忘れやサイホン管の向き間違いを防ぐためです。
Step 3:内部を確認・清掃する
分解したら、各部品と本体容器の内部を丁寧にチェックします。
確認すべきポイント
| 部位 | 確認項目 |
|---|---|
| 本体容器の内面 | 腐食・傷・変形がないか |
| サイホン管 | 曲がり・腐食・詰まりがないか |
| ろ過網(フィルター) | 詰まり・破損がないか |
| パッキン(Oリング) | 硬化・ひび割れ・変形がないか |
| ノズル・ホース | 詰まり・ひび割れがないか |
| 指示圧力計 | 針の動き・精度に異常がないか |
| 消火薬剤 | 変質(固化・変色・沈殿)がないか |
特に本体容器の底部は要注意です。設置場所で湿気が溜まりやすく、腐食が進行しやすい部分です。底部に著しい腐食があれば、整備ではなく廃棄になります(後述)。
Step 4:部品を交換する
内部確認で不良が見つかった部品を交換・修理します。
よくある交換部品
- パッキン(Oリング):劣化していたら新品に交換。気密を保つ重要部品なので、少しでも硬化やひび割れがあれば迷わず交換
- ろ過網:詰まりや破損があれば交換。粉末が固まって詰まるケースが多い
- ノズル:詰まりは清掃で対処。ひび割れがあれば交換
- ホース:ひび割れ・著しい劣化があれば交換
- 指示圧力計:精度不良があれば交換
交換部品は、同一メーカーの純正部品を使用するのが原則です。異なるメーカーの部品を流用すると、サイズが微妙に合わなかったり、気密が保てなかったりする恐れがあります。
Step 5:消火薬剤を充てんする
部品交換が終わったら、消火薬剤を本体容器に戻します。
薬剤充てんのルール
- 規定量を正確に計量する
――消火器ごとに充てん量が決まっています。多すぎても少なすぎてもダメ。必ず秤(はかり)で計量します。 - 薬剤の再利用は「状態次第」
――変質(固化・変色・沈殿)がなければ再利用できます。粉末消火薬剤の場合はふるいにかけて固まりを取り除いてから充てんします。 - 異なる種類の薬剤を絶対に混ぜない
――たとえば、りん酸塩類の粉末と炭酸水素ナトリウム系の粉末を混ぜると、消火性能が大幅に低下します。 - 変質した薬剤は全量交換
――少しでも固化や変色があれば、全量を新しい薬剤に入れ替えます。
注意
Step 6:組み立て・加圧する
薬剤を充てんしたら、分解と逆の手順で組み立てます。
組立の手順
- サイホン管を本体容器に挿入
――管の先端が容器の底まで届いていることを確認 - 新しいパッキンをセット
――キャップ部分のパッキンを忘れずに入れる - バルブを取り付け
――ホース・ノズルも接続 - キャップをしっかり締め付け
――緩みがあるとガス漏れの原因になります
窒素ガスで加圧
組立が完了したら、窒素ガス(N₂)で容器内を加圧します。
ここで重要なのが加圧ガスの種類です。
加圧したら、指示圧力計の針が緑色範囲内にあることを確認します。加圧しすぎ(過充てん)も不足も異常ですので、慎重に調整します。
最後に安全栓を取り付けて、組立完了です。
Step 7:気密試験を行う
組立・加圧が終わったら、最後に気密試験を行います。ガス漏れがないかを確認する大切なステップです。
気密試験の方法
- 石鹸水(発泡液)を用意する
- 以下の箇所に石鹸水を塗布する
- キャップの接合部
- バルブ周り
- ホースの接続部
- 指示圧力計の取付部
- 気泡(泡)が出ないかを確認する
| 結果 | 判定 | 対応 |
|---|---|---|
| 泡が出ない | 合格 | そのまま完了 |
| 泡が出る | 不合格 | 再度分解して原因を修正 |
漏れがあった場合は、パッキンの劣化やキャップの締め付け不足が原因であることが多いです。再度分解して確認し、必要に応じて部品を交換します。
整備してはいけない場合――廃棄の判断基準
整備すればどんな消火器でも直せるわけではありません。次のような重大な不良が見つかった場合は、整備では安全を確保できないため廃棄処分となります。
なぜ廃棄なのか?――本体容器が弱っている状態で内部に圧力をかけると、破裂する危険があるからです。蓄圧式は常時加圧されるため、容器の健全性は文字通り「命に関わる」問題です。
蓄圧式ならではの注意ポイントまとめ
最後に、加圧式との違いを意識しながら、蓄圧式固有の注意点を整理しておきます。
| 項目 | 蓄圧式のポイント |
|---|---|
| 減圧 | 常時加圧のため必ず減圧が必要 |
| 圧力確認 | 指示圧力計でゼロを確認できる |
| 安全構造 | キャップの減圧孔で残圧を逃がせる |
| 加圧ガス | 窒素ガス(N₂)を使用 |
| 気密試験 | 加圧後に石鹸水で漏れ確認 |
| 圧力計の確認 | 針が緑色範囲内であること |
蓄圧式は構造がシンプルで整備しやすい反面、「常に圧力がかかっている」という特性を常に意識する必要があります。減圧を怠らないこと――これが蓄圧式の整備における鉄則です。
まとめ問題
理解度をチェックしましょう。
問題1
蓄圧式消火器の整備において、分解作業に入る前に最初に行うべきことはどれか。
(1)キャップを外して内部を目視確認する
(2)消火薬剤をすべて取り出す
(3)容器内の圧力を排出する
(4)ホースとノズルを取り外す
問題2
蓄圧式消火器を整備後に再加圧する際に使用するガスとして、正しいものはどれか。
(1)二酸化炭素(CO₂)
(2)窒素ガス(N₂)
(3)圧縮空気
(4)アルゴンガス(Ar)
問題3
蓄圧式消火器の気密試験について、正しいものはどれか。
(1)容器を水中に沈めて気泡の有無を確認する
(2)加圧後にキャップ接合部やバルブ周りに石鹸水を塗布し、気泡の有無を確認する
(3)指示圧力計の数値が上昇しないことを確認する
(4)ホースの先端を水につけて気泡の有無を確認する
問題4(応用)
蓄圧式消火器の整備中に次の状態が確認された。廃棄すべきものとして、最も適切なものはどれか。
(1)パッキン(Oリング)にひび割れが見つかった
(2)粉末消火薬剤の一部が軽く固まっていた
(3)本体容器の底部に著しい腐食が確認された
(4)ろ過網に粉末の詰まりが見つかった