結論から言います
強化液消火器は水にアルカリ金属塩類(主に炭酸カリウム)を溶かした液体を使う消火器です。
ポイントを先にまとめると:
- 薬剤:アルカリ金属塩類の水溶液(主に炭酸カリウム K₂CO₃)
- 消火原理:冷却消火が主体、抑制効果(負触媒作用)が補助
- 適応火災:棒状放射→A火災のみ/霧状放射→A・B・C火災
- 加圧方式:蓄圧式が主流
- 最大の強み:冷却効果が高く、再燃を防げる
粉末消火器とセットで試験に出ることが多い消火器です。粉末の弱点(再燃しやすい)を補うのが強化液消火器――この関係を押さえると、試験問題がグッと解きやすくなります。
強化液消火器の薬剤
「強化液」とは、何が"強化"されているのか?
答えはただの水を"強化"した液体です。水にアルカリ金属塩類(主に炭酸カリウム K₂CO₃)を溶かすことで、水だけでは得られない性能を加えています。
| 性質 | 水だけ | 強化液 |
|---|---|---|
| 冷却効果 | ○ | ◎(さらに高い) |
| 抑制効果 | × | ○(負触媒作用) |
| 凍結温度 | 0℃ | −20℃程度 |
| 再燃防止 | △ | ◎ |
試験のポイント
なぜ再燃を防げるのか? アルカリ金属塩の水溶液が燃焼面にしみ込み、冷却効果で温度を下げると同時に、アルカリ成分が燃焼の連鎖反応(ラジカル反応)を化学的に断ちます。冷却と抑制のダブル効果で、粉末消火器よりも再燃しにくいのです。
強化液消火器の構造(蓄圧式)
強化液消火器は蓄圧式が主流です。基本的な構造は粉末消火器の蓄圧式と似ていますが、いくつか違いがあります。
粉末消火器との構造上の違いを確認しましょう。
| 部分 | 粉末消火器 | 強化液消火器 |
|---|---|---|
| 薬剤の状態 | 粉末(固体) | 液体 |
| 容器の材質 | 鋼板が主流 | ステンレスが多い |
| ノズル | 1種類 | 棒状/霧状の切替可能型も |
| 重量 | 比較的軽い | 重い(水が重い) |
容器にステンレスが多く使われるのは、アルカリ性の薬剤が入っているため腐食対策が必要だからです。鋼板では内部が腐食する恐れがあるため、耐腐食性の高いステンレスが採用されます。
蓄圧式に共通する特徴
粉末消火器の記事でも解説しましたが、蓄圧式に共通するポイントを確認しておきましょう。
- 指示圧力計が付いている — 常時加圧なので圧力確認が必要
- レバーを離すと放射が止まる — 断続的に使える
- 加圧用ガス容器(ボンベ)がない — 窒素ガスが直接容器内に充填されている
放射方式と適応火災
強化液消火器を理解するうえで最も重要なポイントがここです。
放射方式は2種類あり、それによって適応する火災が変わります。
最重要ポイント
なぜ霧状なら電気を通さないのか?
棒状放射は途切れない"水の柱"になるため、電気の通り道(導電路)ができてしまいます。一方、霧状放射は水の粒が空気中にバラバラに分散しているため、連続した導電路が形成されません。これがC火災にも使える理由です。
同じ理屈で、霧状放射はB火災(油火災)にも使えます。細かい霧が油面を均一に覆い、窒息効果を発揮するからです。棒状だと勢いよく油面を叩いてしまい、燃えた油が飛び散って延焼する危険があります。
操作手順
操作方法は粉末消火器と同じ3ステップです。
注意
強化液消火器の長所と短所
| 長所 | 短所 |
|---|---|
| 冷却効果が高く再燃を防げる | 粉末より消火速度が遅い |
| 霧状放射ならA・B・C全対応 | 本体が重い(液体が重い) |
| 放射時に視界を遮らない | 棒状放射はA火災のみ |
| 周囲への汚損が少ない | 粉末より価格が高い |
| 寒冷地でも使える(−20℃程度) |
「汚損が少ない」は実務で大きなメリットです。粉末消火器は微細な粉末が広範囲に飛散し、電子機器の内部に入り込んだり、書類や商品を汚したりします。強化液消火器は液体なので、拭き取りで済む場合がほとんどです。
粉末消火器との比較
粉末消火器と強化液消火器はお互いの弱点を補う関係にあります。試験でも比較問題がよく出るので、違いを整理しておきましょう。
実務の現場では、粉末消火器で素早く炎を叩き、強化液消火器で冷却して再燃を防ぐ――この「併用」が理想的な初期消火のかたちです。どちらが優れているという話ではなく、特性の違いを活かすことが大切です。
まとめ問題
記事の内容が理解できたか、チェックしてみましょう!
【問題1】
強化液消火器の消火薬剤について、正しいものはどれか。
(1)水に界面活性剤を加えた液体である
(2)水にアルカリ金属塩類を加えた液体である
(3)リン酸アンモニウムを水に溶かした液体である
(4)二酸化炭素を水に溶かした炭酸水である
【問題2】
強化液消火器の棒状放射が適応する火災として、正しいものはどれか。
(1)A火災のみ
(2)A火災とB火災
(3)A火災とC火災
(4)A火災・B火災・C火災
【問題3】
強化液消火器の特長として、誤っているものはどれか。
(1)冷却効果が高く、再燃しにくい
(2)アルカリ金属塩を含むため凍結しにくい
(3)粉末消火器に比べて消火速度が速い
(4)放射時に視界が遮られにくい
【問題4(応用)】
ある事業所で、美術品を多く展示するギャラリーに消火器を設置することになった。粉末消火器ではなく強化液消火器を選ぶ理由として、もっとも適切なものはどれか。
(1)強化液消火器のほうが消火速度が速いため
(2)強化液消火器のほうが軽量で持ち運びやすいため
(3)強化液消火器は汚損が少なく、視界も確保できるため
(4)強化液消火器のほうが安価であるため