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粉末消火器の構造と機能|蓄圧式・加圧式の仕組みをわかりやすく解説

結論から言います

粉末消火器は日本でもっとも普及している消火器です。ビルの廊下や店舗の入口にある赤い消火器――あれがほぼ粉末消火器です。

ポイントを先にまとめると:

  • 薬剤:リン酸アンモニウム(ABC粉末)が主流
  • 消火原理:抑制消火(負触媒作用)が主、窒息効果が補助
  • 適応火災:A火災・B火災・C火災すべてに対応
  • 加圧方式:蓄圧式が現在の主流(加圧式もある)
  • 弱点:再燃しやすい、視界が遮られる

この記事では、粉末消火器の内部構造から操作の仕組み、試験で狙われるポイントまで詳しく解説します。

 

粉末消火器の薬剤

粉末消火器に使われる薬剤は主に3種類あります。

薬剤名 適応火災 特徴
リン酸アンモニウム A・B・C 万能型。もっとも普及
炭酸水素ナトリウム B・C A火災には不適応
炭酸水素カリウム B・C ナトリウムより消火力大

試験のポイント

A火災に適応するのはリン酸アンモニウム(ABC粉末)だけです。炭酸水素ナトリウム・炭酸水素カリウムはB・C火災のみ。「粉末消火器=全火災対応」と思い込むと間違えます。薬剤の種類まで確認しましょう。

リン酸アンモニウムがA火災にも対応できる理由は、熱を受けると溶けてガラス状の被膜を形成し、燃焼面を覆って再燃を防ぐ効果があるためです。炭酸水素系にはこの性質がありません。

 

粉末消火器の構造(蓄圧式)

現在主流の蓄圧式粉末消火器の内部構造を見てみましょう。

蓄圧式粉末消火器の構造
上部(操作部)
レバー(上下2本)
安全栓(黄色のピン)
指示圧力計(圧力ゲージ)
ホース+ノズル
キャップ(本体とバルブの接続部)
内部(容器内)
本体容器(鋼板製)
粉末消火薬剤
サイホン管(底まで伸びる管)
加圧用ガス(窒素ガス)
※容器内に常時充填

各部品の役割を詳しく見ていきましょう。

 

安全栓(あんぜんせん)

レバーに差し込まれた黄色いピンです。これが入っている間はレバーを握れないため、誤放射を防ぎます。使用時は最初にこのピンを引き抜きます。

 

レバー

上レバーと下レバーがあります。安全栓を抜いた後、上レバーを握り込むことでバルブが開き、薬剤が放射されます。蓄圧式では、レバーを離すとバルブが閉じて放射が止まります。

 

指示圧力計(しじあつりょくけい)

容器内の圧力を示すゲージです。緑色の範囲に針があれば正常。蓄圧式にだけ付いている部品です。

  • 緑色の範囲 → 正常(使用可能)
  • 緑色より左(低い) → 圧力不足(ガス漏れの可能性)
  • 緑色より右(高い) → 圧力過大(異常)

 

サイホン管

容器の内部で底近くまで伸びている管です。加圧されたガスが薬剤を押し、薬剤がこの管を通ってホースから放射されます。

 

ホース・ノズル

薬剤を放射する出口です。ノズルを火元に向けて放射します。

 

粉末消火器の構造(加圧式)

加圧式は蓄圧式と異なり、容器内に加圧用ガス容器(ガスボンベ)が内蔵されています。

加圧式との違い
加圧式の特有部品
加圧用ガス容器(CO₂ボンベ)
カッター(ボンベを破封する刃)
※指示圧力計はなし
※使用前は容器内に圧力なし
動作の流れ
①安全栓を抜く
②レバーを握る
③カッターがボンベに穴を開ける
④ガスが容器内に充満
⑤薬剤が一気に押し出される

 

操作手順

粉末消火器の使い方は3ステップで覚えましょう。蓄圧式・加圧式とも基本は同じです。

消火器の使い方 3ステップ
① ピンを抜く
安全栓(黄色いピン)
を上に引き抜く
② ホースを向ける
ノズルを火元に向ける
炎ではなく燃えている
物の根元を狙う
③ レバーを握る
上レバーを強く握る
手前から掃くように
放射する

注意

粉末消火器の放射時間は約15〜20秒と短いです。放射距離は3〜6m程度。短い時間で的確に消火する必要があるため、「火元の根元を狙って、手前から掃くように」が鉄則です。

 

粉末消火器の長所と短所

長所 短所
ABC全火災に対応(ABC粉末) 再燃しやすい(冷却効果が弱い)
消火速度が速い 放射すると視界が遮られる
電気を通さない(C火災OK) 薬剤が飛散し、清掃が大変
軽量で持ち運びやすい 精密機器に薬剤が入り込む

再燃しやすいのは、粉末の消火原理が「抑制消火」だからです。燃焼の化学反応を止めているだけで、燃えている物自体の温度を十分に下げていません。粉末が散ると化学的な抑制効果がなくなり、まだ高温の可燃物が再び発火する――これが再燃のメカニズムです。

 

なぜ粉末消火器がもっとも普及しているのか?

理由はシンプルです。

  • A・B・C全火災に対応 — 1本でどんな火災にも使える
  • 消火速度が速い — 初期消火で最も重要な性能
  • 軽量・コンパクト — 誰でも持てるサイズ
  • 価格が比較的安い — 大量設置に向く

「万能・速い・軽い・安い」の4拍子。とくに初期消火では「短時間で確実に消す」ことが最優先なので、消火速度の速さは大きなメリットです。再燃のリスクはあっても、初期消火で火勢を抑えられれば十分に役割を果たします。

 

まとめ問題

記事の内容が理解できたか、チェックしてみましょう!

 

【問題1】
蓄圧式粉末消火器に付いていて、加圧式粉末消火器には付いていない部品はどれか。

(1)安全栓
(2)サイホン管
(3)指示圧力計
(4)ホース

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正解:(3)指示圧力計
指示圧力計(圧力ゲージ)は、常時加圧されている蓄圧式消火器にだけ付いている部品です。容器内の圧力が正常かどうかを確認するために必要です。加圧式は使用前に圧力がかかっていないため、圧力ゲージは不要です。安全栓・サイホン管・ホースはどちらの方式にも共通して付いています。

 

【問題2】
粉末消火薬剤のうち、A火災(普通火災)に適応するものはどれか。

(1)炭酸水素ナトリウム
(2)炭酸水素カリウム
(3)リン酸アンモニウム
(4)炭酸水素ナトリウムと炭酸水素カリウムの両方

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正解:(3)リン酸アンモニウム
リン酸アンモニウム(ABC粉末)は、熱を受けると溶けてガラス状の被膜を形成し、燃焼面を覆う性質があります。この効果によりA火災にも対応できます。炭酸水素ナトリウム・炭酸水素カリウムにはこの性質がなく、B・C火災のみの対応です。

 

【問題3】
粉末消火器の短所として、誤っているものはどれか。

(1)放射後に再燃しやすい
(2)放射時に視界が遮られる
(3)消火薬剤が電気を通す
(4)薬剤が飛散して清掃が大変

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正解:(3)消火薬剤が電気を通す ← これが誤り
粉末消火薬剤は電気を通しません。だからこそC火災(電気火災)に適応できるのです。(1)再燃しやすいのは冷却効果が弱いため、(2)粉末が空中に浮遊して視界を遮るのは事実、(4)粉末が周囲に飛散するため清掃が大変なのも事実です。

 

【問題4(応用)】
ある工場の管理者が「粉末消火器は万能だから、これだけ置いておけば安心だ」と言っている。この考えに対する指摘として、もっとも適切なものはどれか。

(1)粉末消火器はB火災に対応していないため不十分である
(2)粉末消火器は消火速度が遅いため初期消火に向かない
(3)粉末消火器は再燃しやすいため、冷却効果のある消火器との併設が望ましい
(4)粉末消火器は加圧式しかないため安全性に問題がある

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正解:(3)粉末消火器は再燃しやすいため、冷却効果のある消火器との併設が望ましい
粉末消火器のABC全火災対応は確かに強みですが、最大の弱点は「冷却効果が弱く再燃しやすい」ことです。とくにA火災(木材・紙など)では、粉末で炎を消した後も高温の可燃物が残り、再び発火する可能性があります。そのため、強化液消火器など冷却効果のある消火器を併設するのが実務上望ましいです。(1)B火災には対応しています。(2)消火速度はむしろ速いです。(4)蓄圧式もあります。

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