結論から言います――消防用設備の非常電源は「3種類」に分かれる
消防用設備等は、火災時に停電しても動作しなければ意味がありません。
たとえば、火災で商用電源が遮断された場合でも、自動火災報知設備は警報を鳴らし続け、誘導灯は避難経路を照らし続ける必要があります。
そのために必要なのが「非常電源」です。消防法では、消防用設備等に設置する非常電源を3種類に分類しています。
- 非常電源専用受電設備
- 自家発電設備
- 蓄電池設備
この記事では、それぞれの特徴・設備ごとの適用・容量基準を整理します。全類の法令で出題されるテーマです。
非常電源の3種類を比較
| 種類 | 仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| 非常電源専用受電設備 | 電力会社からの高圧受電を専用回路で確保 | 他の設備と回路を分離。停電リスクは残る |
| 自家発電設備 | ディーゼルエンジン等で発電機を駆動 | 長時間の電力供給が可能。大規模ビルに設置 |
| 蓄電池設備 | バッテリーに蓄えた電力で動作 | 瞬時に切替可能。容量に限りがある |
①非常電源専用受電設備
電力会社から高圧で受電している建物で、消防用設備専用の受電回路を分離して確保するものです。
仕組み
通常の電気設備と消防用設備の受電回路を分けることで、建物内の漏電やショートで一般回路が遮断されても、消防用設備には電気が供給され続けます。
注意点
- 電力会社からの供給が停止した場合(地域全体の停電など)は使えない
- そのため、非常電源としての信頼性は他の2つより低い
- 主に比較的小規模な建物で採用される
②自家発電設備
ディーゼルエンジンやガスタービンで発電機を回して電力を作る設備です。大型ビルや病院などに設置されています。
仕組み
商用電源が停止すると、自動的にエンジンが起動し、発電機が電力を供給します。起動から電力供給までは通常40秒以内です。
主な基準
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 起動時間 | 停電後40秒以内に電圧確立 |
| 運転時間 | 設備によって異なる(屋内消火栓:30分以上、スプリンクラー:30分以上) |
| 燃料 | 軽油・A重油が一般的 |
| 設置場所 | 不燃材料で区画された専用室(換気設備必須) |
現場のイメージ:大型ビルの地下や屋上に「発電機室」があるのを見たことはありませんか?あの部屋に設置されているのが自家発電設備です。定期的にエンジンを起動して試運転を行い、いざというときに確実に動くことを確認しています。
③蓄電池設備
バッテリー(蓄電池)に電力を蓄えておき、停電時にその電力で消防用設備を動作させるものです。
仕組み
常時充電されている蓄電池が、停電を感知すると瞬時に電力供給を開始します。自家発電設備と違い、起動にタイムラグがないのが最大の利点です。
主な基準
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 切替時間 | 瞬時(無瞬断) |
| 容量 | 設備の種類ごとに規定(自火報:10分以上、誘導灯:20分以上 等) |
| 種類 | 鉛蓄電池、アルカリ蓄電池が一般的 |
蓄電池は容量に限りがあるため、長時間の電力供給には向いていません。そのため、ポンプを使う水系消火設備(スプリンクラー等)の非常電源には不向きで、主に自火報や誘導灯など消費電力が小さい設備に使われます。
設備ごとの非常電源の種類と容量
どの消防用設備にどの非常電源が必要か、容量(運転時間)とともに整理します。
| 消防用設備 | 非常電源の種類 | 容量の目安 |
|---|---|---|
| 自動火災報知設備 | 蓄電池 | 監視状態で60分以上 |
| 誘導灯 | 蓄電池(内蔵型) | 20分以上(大規模建物は60分以上) |
| 屋内消火栓設備 | 自家発電設備 or 蓄電池 | 30分以上 |
| スプリンクラー設備 | 自家発電設備 or 蓄電池 | 30分以上 |
| 非常放送設備 | 蓄電池 | 10分以上 |
| 排煙設備 | 自家発電設備 or 蓄電池 | 30分以上 |
覚え方のコツ:ポンプを回す設備(消火栓・スプリンクラー)は電力消費が大きい→自家発電設備。警報や照明だけの設備(自火報・誘導灯)は電力消費が小さい→蓄電池。このイメージで覚えると整理しやすくなります。
理解度チェック
【問題1】消防用設備等の非常電源として定められている3種類に含まれないものはどれか。
- 非常電源専用受電設備
- 自家発電設備
- 太陽光発電設備
- 蓄電池設備
【問題2】自家発電設備の起動時間の基準として正しいものはどれか。
- 停電後10秒以内
- 停電後40秒以内
- 停電後60秒以内
- 停電後120秒以内
【問題3】自動火災報知設備の非常電源として最も一般的なものはどれか。
- 非常電源専用受電設備
- 自家発電設備
- 蓄電池設備
- 燃料電池設備
まとめ
- 消防用設備の非常電源は3種類:専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備
- 自家発電設備は大電力・長時間供給に対応(起動は40秒以内)
- 蓄電池設備は瞬時切替が可能だが容量に限りがある
- ポンプを使う設備は自家発電、警報・照明系は蓄電池が基本
- 誘導灯は20分以上(大規模建物は60分以上)の蓄電池が必要