全類共通

防火対象物の数え方ガイド1棟原則・令8区画・令9条・地下街指定をマスター

結論から言います

防火対象物の数え方は4つのパターンに集約できます。原則は「1棟=1防火対象物」ですが、令8区画で分割したり、令9条で合算したり、地下街指定で最厳基準を適用したりと例外があります。この記事では4パターンすべてを条文・現代語訳・具体例つきで完全解説します。

防火対象物の数え方 ― 判定フローチャート
原則:1棟 = 1防火対象物
消防法17条の基本単位は「建物1棟」
チェック①:令8区画で「分けられる」か?
開口部ゼロの耐火壁・床で完全に仕切られている?
YES:区画ごとに別の防火対象物(分割)
NO:1棟のまま次へ
チェック②:令9条で「まとめられる」か?
複合ビルで同じ用途(別表1①〜⑮項)の部分がある?
YES:同一用途の面積を合算して1つ
→ ただし7つの命綱設備は合算せず個別判定
チェック③:令9条の2「地下街指定」か?
地下街とつながる区画で消防長・署長が指定した?
YES:地下街と同じ最も厳しい設備基準を適用

試験での出題パターン

・全類共通の法令科目でほぼ毎回出題される最重要テーマ
・「令8区画の成立条件は?」「令9条の合算対象外の設備はどれ?」が定番
・甲種では製図の前提知識としても重要(防火対象物の範囲で設備計算が変わる)
引っかけポイント:令8区画に防火戸があっても開口部扱い → 分割不可

同じ敷地に複数の建物(防火対象物)があっても別表第一、管理している人が同じなら、消防法のルール(第8条1項)では“1つの大きな建物”として扱います。

消防法8条1項

学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに準ずるものとして政令で定める大規模な小売店舗を含む。以下同じ。)、複合用途防火対象物(防火対象物で政令で定める二以上の用途に供されるものをいう。以下同じ。)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。

消防法施行令2条

同一敷地内に管理について権原を有する者が同一の者である別表第一に掲げる防火対象物が二以上あるときは、それらの防火対象物は、法第八条第一項の規定の適用については、一の防火対象物とみなす。

法律上の考え方
学校のキャンパス校舎・体育館・図書館など建物がバラバラに建っているけど、どれも校長先生が管理しているぜんぶまとめて 「1つの防火対象物」 と数える
ショッピングモール本館・別館・立体駐車場が同じ敷地にあり、モール会社が全部管理これも 「1つ」 とみなす

どうして1つにしちゃうの?

  1. 責任者をハッキリさせるため
    • 火事を防ぐ計画や訓練をまとめて作る人(=防火管理者)を1人決めやすい。
  2. 安全対策をサボれないようにするため
    • バラバラに数えると「この建物は小さいからルールがゆるい」という逃げ道ができる。
    • まとめて1つにすれば、合計の人数や面積でしっかりした安全基準が適用される。
  3. 実際の火事は境目なく広がる
    • 敷地内の建物どうしは近いので、火は簡単に移る。
    • だから最初から「一体」で考えた方が現実的。

押さえておくポイント

  • 「管理が同じ」かどうか がカギ
    • オーナーや経営者が別々なら、それぞれ別カウントになることもある。
  • これは 消防法第8条1項(防火管理者を置く義務) に限った特別ルール。
    • 消防設備(スプリンクラーなど)をどこに何個付けるか、という別の条文では個別に数えるケースもある。
  • 試験勉強では
    • 「同一敷地+同一管理=1つ」 と覚えておけば OK!同じ敷地・同じ持ち主の建物は、火事対策のルール上は “まとめて1個”
      だから責任者も防火計画も “ひとまとめ” に考える

消防施行令8条

防火対象物が次に掲げる当該防火対象物の部分で区画されているときは、その区画された部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の防火対象物とみなす。

がっちりした防火区画で仕切られている部分は、消防法上「別々の建物」として数える。

どういう仕切りなら別カウント?

区画のタイプイメージポイント
① 開口部のない耐火構造の壁・床コンクリートの壁や床で、ドア・窓が一切ない火が物理的に通れない“固い防火シャッター”みたいなもの。
② 耐火構造+防火設備付き壁や床に防火戸・シャッターなどが付いており、自動で閉まる仕組みなど**「防火上有効な措置」**が取られている。普段は人の出入りがあっても、火事になるとピタッと閉じて炎と煙を止める。

※②は「建築基準法2条9号②ロに規定する防火設備」など法律で性能が決められています。

なんで“別々”にするの?

火が広がりにくい

  • 壁・床が2時間以上燃えない/開口部が自動で閉じる → 延焼リスクが大幅ダウン。

設備計算が楽になる

  • スプリンクラーや消火器の数を区画ごとに算出できる。

管理責任がハッキリ

  • 例えば「店舗ゾーン」と「住宅ゾーン」で防火管理者を分けたいときに便利。

例で覚える

具体例どう数える?
低層がショッピングモール、上層がマンション→ 両者の間に開口部のない耐火床を設置モール部分=1、防火床、マンション部分=1 → 合計2区画
工場⇔倉庫を耐火壁+防火シャッターで分離工場=1、倉庫=1 → それぞれ独立
間仕切りが石こうボードだけ/防火戸が常時開放で自動閉鎖ナシ壁の性能不足 → “1つの防火対象物” のまま

壁・床が“完全防火仕様”なら、その向こう側は別の世界――消防法でも“別の建物”として扱うんだ。

消防施行令第9条

別表第一(十六)項に掲げる防火対象物の部分で、同表各項((十六)項から(二十)項までを除く。)の防火対象物の用途のいずれかに該当する用途に供されるものは、この節(第十二条第一項第三号及び第十号から第十二号まで、第二十一条第一項第三号、第七号、第十号及び第十四号、第二十一条の二第一項第五号、第二十二条第一項第六号及び第七号、第二十四条第二項第二号並びに第三項第二号及び第三号、第二十五条第一項第五号並びに第二十六条を除く。)の規定の適用については、当該用途に供される一の防火対象物とみなす。

複合ビルの中でも、同じ用途(令別表第1の①〜⑮項)で使われている部分は、“ぜんぶまとめて1つの防火対象物” として消防設備を計算する。

※令9条には「(ただし○○設備は除く)」というかっこ書きがあります。たとえば屋内消火栓設備・連結送水管など一部設備は棟全体の面積で判定するので要注意。

具体例でイメージ

  1. 大型ショッピングモール
    • 100店のテナントすべてが「(4)項 商店」
    • 全部まとめて1区画として延べ面積を計算
  2. 駅ビル(映画館+飲食店+事務所)
    • 映画館(1,000 ㎡)=(1)項、飲食フロア=(2)項イ、オフィス=(15)項
    • それぞれ①〜③と用途が異なるので 用途ごとに1区画ずつ(最大3区画)
  3. テナントが入れ替わっても?
    • 店舗A→店舗Bに変わっても同じ「商店」カテゴリーなら合算のまま
    • 管理会社が複数でも 管理者の違いは関係なし

覚え方ワンポイント

  • 「複合ビル + ①〜⑮項 + 同一用途 ⇒ 1区画(令9)」
  • 管理者やオーナーの違いは無視。
  • かっこ書き設備は合算しない—問題文に「屋内消火栓を除き」とあれば例外を疑う。
  • 同じ用途を“ひとまとめ”に考えることで、現場の安全基準を底上げし、管理・点検を分かりやすくする――これが消防施行令9条の狙いです。

消防施行令第9条の2

別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ又は(十六)項イに掲げる防火対象物の地階で、同表(十六の二)項に掲げる防火対象物と一体を成すものとして消防長又は消防署長が指定したものは、第十二条第一項第六号、第二十一条第一項第三号(同表(十六の二)項に係る部分に限る。)、第二十一条の二第一項第一号及び第二十四条第三項第一号(同表(十六の二)項に係る部分に限る。)の規定の適用については、同表(十六の二)項に掲げる防火対象物の部分であるものとみなす。

地下街とつながっている店や通路で、消防長が「地下街の一部だよ」と指定した所は、スプリンクラーや火災報知器などの 厳しい地下街ルール をそのまま適用します。

どういう設備が“地下街扱い”になる?

設備地下街基準 ⇒ 指定部分にも同じ基準
スプリンクラー設備面積が小さくても設置必須
自動火災報知設備感知器の密度やベルの音量も地下街仕様
ガス漏れ火災警報設備飲食店ならガス探知機を追加
非常警報器具・非常放送設備スピーカー配置や音圧を強化

要するに「地下街は火事がこわい → その延長上にある区画も同じだけしっかり守れ!」という考え方です。

なぜわざわざ指定するの?

煙が逃げにくい

  • 地下は排煙経路が限られ、少し離れていても煙が入り込む。

避難経路が共通

  • 地下街と同じ通路・階段を使って避難することが多い。

“面積逃れ”を防止

  • 「壁で区切ったから小規模でOKでしょ?」という抜け道を塞ぐ。
地下街指定のイメージ
地下街通路
服屋A
指定 → 地下街ルール
カフェB
指定 → 地下街ルール
物販C
非指定 → 通常基準

消防長・署長が指定した区画は面積を問わずSP・自火報など必須

ポイント

「地下街+指定=地下街ルールを丸ごと適用」

“スプリンクラー・火災報知・ガス漏れ・非常警報”の4セットを暗記

指定は 消防長 or 署長 が行う(オーナーの申請ではない)

地下街とつながる区画は、行政が指定すれば地下街と同じ厳しい設備基準
逃げにくい地下火災のリスクを減らすための特別ルールです。

試験で狙われるポイントとよくある間違い

間違い①:令8区画の「開口部ゼロ」を甘く見る
防火戸(自動閉鎖式)があっても開口部扱い → 分割できない。配管の貫通スリーブも開口部。「穴が1つでもあればアウト」と覚えましょう。試験では「防火戸付きの耐火壁で区画されている場合、令8区画として認められるか?」という引っかけが定番です。
間違い②:令8区画と令9条の方向を取り違える
・令8区画 = 物理的に「分ける」(耐火壁で1棟を複数に分割)
・令9条 = 法律的に「まとめる」(同用途の面積を合算)
方向が真逆です。問題文をよく読んで、「分割の話か?合算の話か?」を最初に判断しましょう。
間違い③:令9条の「7つの命綱設備」を忘れる
令9条で合算しない7設備: SP・自火報・ガス漏れ・漏電・非常警報・避難器具・誘導灯
覚え方:「スジガロヒヒユ」(スジがロヒヒ言う)
ス=スプリンクラー、ジ=自火報、ガ=ガス漏れ、ロ=漏電、ヒ=非常警報、ヒ=避難器具、ユ=誘導灯
これらは人命に直結するため、用途ごとの合算ではなく棟全体の面積で判定します。
間違い④:地下街指定の権限者を間違える
地下街指定は建物所有者の申請ではなく、消防長または消防署長が行います。行政側が「ここは地下街と一体だ」と判断して指定する点がポイント。「所有者が決める」と引っかけてくる出題があります。

関連記事で理解を深めよう

防火対象物の数え方は、消防法の他の規定とも密接に関わっています。以下の記事もあわせて読むと、法令全体の理解がぐっと深まります。

令8区画・令9条の判定問題は、過去問を何度も解いて出題パターンに慣れるのが合格への近道です。各類の参考書選びはおすすめ参考書と勉強法を参考にしてください。

「法令の条文を読むだけではイメージが湧かない…」という方は、動画で実際の建物図面を見ながら学べる通信講座も選択肢のひとつです。

SAT消防設備士講座を見てみる

理解を深めるための過去問風の問題集

問 題選択肢(1〜4)
1消防用設備を「設置・維持」する義務を定めている条文はどれか。1) 消防法8条 2) 消防法17条 3) 施行令8条 4) 施行令9条
2原則として防火対象物を数えるときの基本単位はどれか。1) 敷地全体 2) 地下部分 3) 1棟の建物 4) フロアごと
3施行令8条で「区画を別の防火対象物」とみなす必須条件は?1) 耐火壁がある 2) 開口部がない 3) 用途が異なる 4) 管理者が同一
4次のうち「開口部」に該当しないものは?1) 換気口 2) 非常階段 3) 電線貫通スリーブ 4) 鉄筋
5「令8区画」の通称が直接示すのはどの条文か。1) 施行令8条 2) 施行令9条 3) 施行規則8条 4) 消防法8条
6施行令9条で合算できるのは次のどれか。1) 店舗+オフィス 2) 劇場+飲食店 3) 同じ商店用途 4) 病院+倉庫
7施行令別表1で「店舗」は第何項に分類されるか。1) 2項イ 2) 3項ロ 3) 4項 4) 15項
8施行令9条の合算対象外となる設備はどれか。1) 消火器 2) 誘導灯 3) 換気設備 4) 排煙窓
9施行令9条‐2等で地下街指定が行えるのは誰か。1) 建物所有者 2) 消防長または消防署長 3) 市長 4) 施工会社
10地下街指定を受けた区画に要求される基準の特徴は?1) 地上と同等 2) 低減 3) 最も厳しい 4) オーナー判断
問 題選択肢(1〜4)
11「令8区画」で1か所でも開口部がある場合の扱いは?1) 別区画で良い 2) 合算不可 3) 別区画にできない 4) 消防長が決める
12施行令9条で合算する際、管理者の異同は…1) 合算に影響しない 2) 影響する 3) 消防長が判断 4) 署長が判断
13次のうち、令8区画の「耐火構造」に該当しない壁は?1) 鉄筋コンクリート壁 2) ALC耐火壁 3) 石こうボード二重貼り 4) 木造合板壁
14施行令9条で「用途が同一か否か」の判定根拠は?1) 建築基準法用途地域 2) 施行令別表1 3) 消防法17条 4) 施行規則
15スプリンクラー設備が令9条で合算不可なのはなぜ?1) 設計が複雑 2) 重要性が高い 3) 費用負担軽減 4) 書類手続き
16地下街指定を受けた場合、特に強化される設備は?1) 換気扇 2) 誘導灯 3) 消火器 4) 避雷針
17開口部「窓」として扱われる最小要件は?1) 面積0.1㎡超 2) ガラス使用 3) 貫通穴なら何でも 4) 排煙機能
18施行令8条区画に**出入口付防火戸(自動閉鎖)**がある場合は?1) 開口部扱い 2) 開口部でない 3) 消防庁裁量 4) 令9条へ移行
19同一敷地に2棟あり管理者が同じ。通常は何対象物?1) 1 2) 2 3) 用途次第 4) 消防長指定次第
20施行令9条で合算する“同用途面積”の主な目的は?1) 設備を削減 2) 設備逃れ防止 3) 点検簡素化 4) 所有権保護
問 題選択肢(1〜4)
21「令8区画」は防火管理者の選任義務にどう影響?1) 各区画ごと 2) 1棟で可 3) 消防が決定 4) 不要
22施行令9条で**駐車場(15項)と事務所(15項)**が混在。合算は?1) 全面合算 2) 別計算 3) 半分合算 4) 地下限定
23令8区画が別対象物とされた場合のメリットは?1) 設備基準が緩和 2) 火災拡大防止 3) 点検免除 4) 税制優遇
24地下街指定を外す(解除)権限を持つのは?1) 建物所有者 2) 消防長・署長 3) 市長 4) 県知事
25令9条で合算できる複合用途防火対象物区分は?1) 16項 2) 17項 3) 5項 4) 9項イ
26令8区画の“耐火床”に求められる性能は?1) 1時間耐火 2) 45分耐火 3) 2時間耐火 4) 性能指定なし
27令9条の同用途区画に新テナントが入替。要再計算?1) 必ず再計算 2) 同用途なら不要 3) 署長が指示 4) 半年ごと
28令8区画内の火災は他区画へ拡大しにくい理由は?1) 給排気停止 2) 構造耐火 3) 自家発電 4) 避難経路複数
29地下街指定区画の避難器具で追加が必要になりやすいもの1) 置き型はしご 2) 緩降機 3) 救助袋 4) 滑り棒
30令9条合算で床面積合計が基準超となった場合の影響は?1) 設備追加義務 2) 解除願い提出 3) 減免措置 4) 無影響

解答一覧

1-2 2-3 3-2 4-4 5-1 6-3 7-1 8-2 9-2 10-3
11-3 12-1 13-4 14-2 15-2 16-2 17-3 18-1 19-2 20-2
21-1 22-1 23-2 24-2 25-1 26-3 27-2 28-2 29-3 30-1

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