荷重・応力・ひずみは、外から加わる力、材料内部の負担、変形の割合を順に表す言葉です。計算では、単位をそろえることと、公式が使える条件を確認することが重要です。
最初に押さえる6点
- 荷重は物体に外から加わる力
- 一様な軸方向荷重による垂直応力は σ = F / A
- 軸方向ひずみは ε = ΔL / L で、単位を持たない
- 線形弾性域では σ = Eε
- 1N/mm²は1MPaに等しい
- 安全率の基準強さは問題文や設計基準で確認する
消防試験研究センターの科目表では、乙種第5類・第6類の「基礎的知識(機械)」は各5問です。ただし、これは科目全体の問題数であり、荷重・応力・ひずみという個別テーマの出題回数を示すものではありません。
荷重の種類
荷重は、部材に力が加わる向きや変形のしかたから整理できます。
| 荷重 | 基本的な作用 | 単純な例 |
|---|---|---|
| 引張荷重 | 両側へ引き離す | ロープを引く |
| 圧縮荷重 | 両側から押す | 柱に重さがかかる |
| せん断荷重 | 断面をずらす | はさみで紙を切る |
| 曲げ荷重 | 部材をたわませる | 棚板に物を載せる |
| ねじり荷重 | 軸まわりにひねる | ドライバーを回す |
実際の部材には複数の荷重が同時に働くことがあります。たとえば、ボルトに引張りとせん断が同時に生じる場合は、どれか1種類だけと決めつけず、荷重条件を分けて確認します。
時間による分類
| 分類 | 意味 |
|---|---|
| 静荷重 | 大きさや向きが時間に対してほぼ変化しない荷重 |
| 動荷重 | 衝撃や振動など、時間とともに変化する荷重 |
| 繰返し荷重 | 増減や反転を繰り返す荷重。疲労を検討する必要がある |
同じ最大荷重でも、静かに一度加える場合と、繰り返し加える場合では破壊の考え方が異なります。荷重の大きさだけでなく、回数、速度、向き、温度、腐食環境なども材料の挙動に影響します。
応力とは
応力は、荷重を受けた材料内部に生じる単位面積当たりの力です。まっすぐな棒へ軸方向に一様な引張荷重または圧縮荷重が加わる単純な場合、平均垂直応力は次の式で表せます。
平均垂直応力
σ = F / A
- σ:垂直応力
- F:断面に垂直な軸方向荷重
- A:荷重を受ける断面積
応力のSI単位はPa(パスカル)で、1Pa = 1N/m²です。断面積をmm²で扱うときは、次の関係が便利です。
1N/mm² = 1MPa
計算例
断面積100mm²の棒へ、軸方向に1,000Nの引張荷重を一様に加えます。
σ = 1,000N / 100mm²
= 10N/mm²
= 10MPa
σ = F / Aをそのまま使えない場合
曲げでは断面内の応力が一様ではなく、ねじりや座屈にも別の式と条件があります。応力集中がある形状、複合荷重、内圧を受ける容器なども、単純な軸力の式だけで実物を設計できません。
ひずみとは
ひずみは、元の寸法に対してどれだけ変形したかを表す割合です。軸方向の伸びまたは縮みを扱う場合は、次の式を使います。
軸方向ひずみ
ε = ΔL / L
- ε:ひずみ
- ΔL:長さの変化量
- L:変形前の長さ
分子と分母がどちらも長さなので、ひずみは無次元です。百分率で示すこともあります。
計算例
長さ2mの棒が2mm伸びた場合、まず単位をそろえます。
L = 2m = 2,000mm
ε = 2mm / 2,000mm
= 0.001 = 0.1%
フックの法則とヤング率
材料の応力とひずみが直線関係にある範囲では、次の式で表せます。
一軸の線形弾性関係
σ = Eε
- E:ヤング率(縦弾性係数)
- σ:軸方向の垂直応力
- ε:軸方向ひずみ
ヤング率は応力―ひずみ線図の初期の直線部分の傾きで、材料の弾性的な変形しにくさを示します。値が大きいほど、同じ応力に対する弾性ひずみは小さくなります。
ただし、フックの法則はすべての荷重範囲で成り立つわけではありません。また、ヤング率や強度は同じ材料名でも、材種、温度、加工、熱処理などによって異なります。計算では問題文で与えられた値を使います。
伸びを求める計算例
長さ1.5m、断面積50mm²の棒へ3,000Nの引張荷重を加えます。問題でヤング率E = 200GPaが与えられたときの伸びを求めます。
- 応力:σ = 3,000N / 50mm² = 60N/mm² = 60MPa
- ひずみ:ε = σ / E = (60 × 106) / (200 × 109) = 0.0003
- 伸び:ΔL = εL = 0.0003 × 1.5m = 0.00045m = 0.45mm
この計算は、棒が一様で、軸方向荷重を受け、線形弾性関係が成り立つという前提で行っています。
応力―ひずみ線図の読み方
引張試験では、試験片へ荷重を加え、応力とひずみの関係を調べます。線図の形は材料によって異なるため、すべての材料が同じ順序・形を示すとは限りません。
| 用語 | 読む内容 |
|---|---|
| 比例限度 | 応力とひずみの比例関係が保たれる範囲の上限 |
| 弾性域 | 除荷したとき、変形が概ね回復する範囲 |
| 降伏 | 塑性変形が明確に進み始める状態。明瞭な降伏点がない材料もある |
| 引張強さ | 公称応力が最大となる値 |
| 破断 | 試験片が分離する状態 |
軟鋼のように降伏が明瞭な材料もあれば、明瞭な降伏点を示さず、規定の永久ひずみに基づく耐力を使う材料もあります。「比例限度→弾性限度→降伏点→引張強さ→破断」が全材料に必ず現れる、と一般化しないことが大切です。
弾性変形と塑性変形
| 変形 | 荷重を除いた後 | 例 |
|---|---|---|
| 弾性変形 | 元の形へ戻る | 弾性域内で引張った棒 |
| 塑性変形 | 永久変形が残る | 針金を大きく曲げた後 |
実際には、弾性と塑性の境界や破壊のしかたは材料・形状・温度・荷重速度などで変わります。見た目が元に戻っただけで健全性を判断せず、製品の点検基準に従います。
安全率と許容値
安全率は、設計に余裕を持たせるための係数です。ただし、分野や規格により、強さと使用応力の比として扱う場合と、設計荷重へ掛ける係数として扱う場合があります。
単純な計算問題で次の関係が指定されている場合は、その定義に従います。
比として定義する例
S = 基準強さ / 許容応力
許容応力 = 基準強さ / S
基準強さを勝手に引張強さへ固定しない
設計基準では、降伏強さ、引張強さ、座屈、疲労、使用環境など、確認する破損モードごとに基準と係数が異なります。問題文や適用規格が「どの強さ」「どの安全率」を指定しているか確認してください。
単純化した計算例
問題文で「基準強さ450MPa、安全率3」と定義された場合、
許容応力 = 450MPa / 3 = 150MPa
さらに、軸方向荷重を受ける断面積が200mm²なら、
F = σA = 150N/mm² × 200mm²
= 30,000N = 30kN
これは指定された単純モデルの計算結果です。実物の設計では、形状、応力集中、荷重の組合せ、疲労、腐食、製造ばらつき、適用規格などを別途確認します。
計算手順
- 対象を確認:軸力、曲げ、ねじりなど、どの荷重かを確認する
- 条件を確認:一様断面、線形弾性など、公式の前提を確認する
- 単位をそろえる:Nとmm²ならN/mm²、Nとm²ならPaで計算する
- 公式へ代入:記号の意味を確認して数値を入れる
- 桁を確認:MPa、GPa、mm、mの変換を再確認する
- 答えの意味を確認:応力、ひずみ、伸び、荷重のどれを求めたか確認する
オリジナル確認問題
問題1
棚板に物を載せ、板がたわむとき、中心となる荷重分類はどれですか。
- 引張荷重
- 圧縮荷重
- 曲げ荷重
- ねじり荷重
解答を見る
3。単純化すると、棚板をたわませる曲げ荷重として整理できます。
問題2
断面積100mm²の棒へ1,000Nの軸方向引張荷重を一様に加えました。平均垂直応力はいくらですか。
- 0.1MPa
- 1MPa
- 10MPa
- 100MPa
解答を見る
3。1,000 / 100 = 10N/mm² = 10MPaです。
問題3
長さ2,000mmの棒が2mm伸びました。軸方向ひずみはいくらですか。
- 0.0001
- 0.001
- 0.01
- 0.1
解答を見る
2。ε = 2 / 2,000 = 0.001です。
問題4
σ = Eεの関係について適切な説明はどれですか。
- すべての材料・荷重範囲で成立する
- 一軸の線形弾性域で用いる
- 塑性変形だけを表す
- Eは安全率を表す
解答を見る
2。Eはヤング率で、式は線形弾性関係を表します。
問題5
長さ1.5m、断面積50mm²の棒へ3,000Nを加えます。E = 200GPaとすると、線形弾性域での伸びはいくらですか。
- 0.045mm
- 0.45mm
- 4.5mm
- 45mm
解答を見る
2。σ = 60MPa、ε = 0.0003、ΔL = 0.00045m = 0.45mmです。
問題6
問題文で基準強さ450MPa、安全率3、断面積200mm²と定義されています。許容応力を基準強さ/安全率で求めるとき、許容される軸方向荷重はいくらですか。
- 3,000N
- 15,000N
- 30,000N
- 90,000N
解答を見る
3。許容応力は150MPa = 150N/mm²、荷重は150 × 200 = 30,000Nです。
まとめ
- 荷重は作用のしかたと時間変化の両面から整理する
- 一様な軸方向荷重の平均垂直応力はσ = F/A
- 軸方向ひずみはε = ΔL/Lで無次元
- σ = Eεは線形弾性域で用いる
- 応力―ひずみ線図の形や降伏の現れ方は材料によって異なる
- 安全率の定義と基準強さは問題文・適用規格を確認する
力とモーメントは「力のつりあいとモーメント」、材料ごとの違いは「材料の性質」、圧力の基礎は「圧力・流体の基礎」で整理しています。
一次情報・参考資料
- 消防試験研究センター「試験科目及び問題数」
- NIST Guide to the SI「SI derived units」
- NASA「Modulus of Elasticity, or Young's Modulus」
- NASA「Mechanical Testing」
- NASA-STD-5001「Structural Design and Test Factors of Safety」
※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。図や画像だけで機器を判断せず、製品表示・取扱説明書・公式資料を確認してください。
記事、模擬試験、ミニテストは学習の補助を目的としています。試験の申請や実務上の判断では、最新の法令、試験実施機関、所轄消防機関、製品の公式資料等も確認してください。
内容の誤りやお気づきの点は、お問い合わせフォームからご連絡ください。詳しくは免責事項をご確認ください。