消火器具の必要量は、消防法施行規則第6条に従い、対象となる防火対象物・部分の面積と用途別の算定基準面積から確認します。ただし、面積の割り算だけで設置が完了するわけではありません。適応する消火器具、階ごとの歩行距離、危険物・電気設備・多量の火気を使用する場所に対する追加基準も別に満たす必要があります。
最初に押さえる6点
- 設置対象かどうかは先に消防法施行令第10条で判定する
- 算定基準面積は用途により50㎡・100㎡・200㎡の3区分
- 所定の耐火構造と仕上げの両条件を満たすと基準面積は2倍
- 必要な能力単位の合計は「対象面積÷算定基準面積」以上
- 大型消火器以外の消火器具は、原則として歩行距離20m以下に配置する
- 地階・無窓階・3階以上の50㎡基準は「能力単位1を加算する規定」ではない
この記事は国の基準を学習用に整理したものです。実際の建物では、用途部分や共用部分の面積、設備、貯蔵物、市町村条例などを図面と現況で確認し、所轄消防署または有資格者へ相談してください。
能力単位とは
能力単位は、消火器具の消火能力を法定の試験方法・換算方法で表す数値です。業務用消火器の表示には、たとえばA-3・B-7・Cのような表記があります。
- A-3:普通火災に対する能力単位が3
- B-7:油火災に対する能力単位が7
- C:電気火災に適応することを示す表示。数値の能力単位ではない
AとBは対象火災が異なるため、3+7=10のようには合算しません。施行規則第6条では、令別表第二で対象物の消火に適応するとされた消火器具を選び、その対象に用いる能力単位の合計が必要値以上となるように設置します。
消火器以外の簡易消火用具にも換算値があります。例として、所定の水バケツ3個は1単位、所定の乾燥砂1塊は0.5単位です。このため、法令上の必要値を求める段階で一律に整数へ丸めるのではなく、実際に設ける器具の能力単位合計が必要値以上かを確認します。
消火器の分類と表示は「消火器の分類と全体像」、A・B・C火災への適応は「適応火災と消火器の選び方」も参照してください。
計算の前に設置対象を確定する
施行規則第6条は、施行令第10条第1項各号に掲げる防火対象物またはその部分を前提にした技術基準です。先に次の条件から設置対象を確定します。
- 用途だけで対象となるもの、および所定の火気設備・器具がある飲食店
- 用途別の延べ面積150㎡または300㎡基準に該当するもの
- 少量危険物・指定可燃物を貯蔵または取り扱うもの
- 前各号以外の建築物で、地階・無窓階・3階以上の階が50㎡以上のもの
50㎡を能力単位へ足さない
地階・無窓階・3階以上の階の床面積50㎡以上という条件は、施行令第10条第1項第5号の設置対象判定です。「50㎡ごとに能力単位1を付加する」という意味ではありません。設置義務の判定は「消火器具の設置義務と設置対象」で整理しています。
基本の必要能力単位
施行規則第6条第1項の関係は、次のように表せます。
設置する消火器具の能力単位合計
≧ 対象となる延べ面積または床面積 ÷ 算定基準面積
条文は「防火対象物またはその部分」の「延べ面積または床面積」としています。建物全体の延べ面積をいつでも一括して割るわけではなく、設置対象となった根拠や用途部分に合わせて対象面積を確認します。
算定基準面積は3区分
| 算定基準面積 | 令別表第一の用途 | 主な例 |
|---|---|---|
| 50㎡ | (一)項イ、(二)項、(十六の二)項、(十六の三)項、(十七)項 | 劇場・映画館、遊技場・カラオケボックス等、地下街、準地下街、重要文化財等 |
| 100㎡ | (一)項ロ、(三)項〜(六)項、(九)項、(十二)項〜(十四)項 | 公会堂・集会場、飲食店、物品販売店舗、旅館・共同住宅、病院・福祉施設、工場、駐車場、倉庫等 |
| 200㎡ | (七)項、(八)項、(十)項、(十一)項、(十五)項 | 学校、図書館・博物館、停車場、神社・寺院、事務所等 |
(一)項イと(一)項ロは別区分
劇場・映画館などの(一)項イは50㎡区分ですが、公会堂・集会場の(一)項ロは100㎡区分です。「(一)項はすべて50㎡」とは整理できません。
表中の「主な例」は用途を理解するための略記です。病院・福祉施設などには細かな区分があるため、実物件では令別表第一の原文で該当項を確定してください。
所定の構造・仕上げで基準面積が2倍
施行規則第6条第2項は、次の両方を満たす防火対象物について、表の面積を2倍にします。
- 建築基準法上の特定主要構造部を耐火構造とする
- 壁・天井(天井がない場合は屋根)の室内に面する部分の仕上げを難燃材料とする
| 用途区分 | 通常 | 第6条第2項の両条件を満たす場合 |
|---|---|---|
| 50㎡区分 | 50㎡ | 100㎡ |
| 100㎡区分 | 100㎡ | 200㎡ |
| 200㎡区分 | 200㎡ | 400㎡ |
「耐火構造だけ」「難燃材料の仕上げだけ」では2倍になりません。また、現行条文の用語は単なる「主要構造部」ではなく特定主要構造部です。「耐火+内装制限あり」とだけ覚えず、条文の二条件を確認します。
複合用途は用途部分を分けて確認する
施行令第9条は、複合用途防火対象物の各用途部分を、この節の適用上、原則としてその用途の一つの防火対象物とみなします。飲食店部分と事務所部分がある建物なら、各部分の用途区分と面積を確認し、建物全体へ一律の算定基準面積を当てはめません。
共用部分の扱いを含む実際の算定は、用途、管理、区画、図面によって判断が必要です。特定・非特定という大分類だけで50㎡・100㎡・200㎡を決めないでください。用途区分の基礎は「特定防火対象物と非特定防火対象物」で確認できます。
追加で確認する4つの基準
基本の面積計算だけで終わらない場合があります。施行規則第6条第3項から第5項、第6項の配置基準を別に確認します。
1.少量危険物・指定可燃物
少量危険物または指定可燃物を貯蔵・取り扱う対象では、第1項・第2項による建築物等の必要量とは別に、その物品へ適応する消火器具を設けます。必要な能力単位は、貯蔵・取扱数量を次の数量で除した数以上です。
| 区分 | 除数 |
|---|---|
| 少量危険物 | 危険物の指定数量 |
| 指定可燃物 | 危険物政令第1条の12に規定する数量の50倍 |
普通火災用の能力単位を機械的に足すのではなく、危険物・指定可燃物の種類に適応する器具と能力単位を選びます。
2.電気設備
変圧器、配電盤その他これらに類する電気設備がある場合は、電気設備に適応する消火器を、その設備がある場所の床面積100㎡以下ごとに1個設けます。これは能力単位の割り算ではなく、個数で定められた追加基準です。
3.多量の火気を使用する場所
鍛造場、ボイラー室、乾燥室その他多量の火気を使用する場所がある場合は、その場所の床面積を25㎡で除した数以上となる能力単位の消火器具を追加します。建築物その他の工作物に適応する器具を選びます。
ただし、小規模特定飲食店等には第6条第5項ただし書の例外があります。少量危険物・指定可燃物を扱うもの、または所定の地階・無窓階・3階以上の階があるものは例外から除かれます。「火を使う設備があれば、用途や条件を問わず25㎡計算」と単純化しないでください。
4.歩行距離20m
第6条第1項から第5項により設ける消火器具は、同条第6項の区分に従い、原則として一の消火器具までの歩行距離が20m以下となるよう配置します。基本設置分は防火対象物の階ごと、危険物分は貯蔵・取扱場所、電気設備分は設備のある場所など、基準となる部分が分かれています。
能力単位が足りても、1か所へまとめて置けない
能力単位の合計を満たすだけでは不十分です。階や対象場所ごとに、実際に通行できる経路で20m以下となる配置を確認します。
大型消火器の30m基準は施行規則第7条の別規定で、指定可燃物を所定数量以上貯蔵・取り扱う場合が対象です。「小型は20m、大型ならどの建物でも30m」と置き換えるものではありません。
計算例
例1:物品販売店舗800㎡
物品販売店舗は(四)項なので100㎡区分です。特定主要構造部が耐火構造で、室内に面する壁・天井の仕上げが難燃材料であれば、基準面積は2倍の200㎡になります。
800㎡ ÷ 200㎡ = 4
建築物に適応する消火器具の能力単位合計を4以上とします。A-3の消火器だけを用いるなら、能力単位だけを見れば2本で6となりますが、各階・各部分からの歩行距離20m以下も別に確認します。
例2:事務所1,200㎡
事務所は(十五)項なので200㎡区分です。特定主要構造部は耐火構造でも、所定の難燃材料仕上げを満たさない場合は2倍にできません。
1,200㎡ ÷ 200㎡ = 6
建築物に適応する消火器具の能力単位合計を6以上とします。A-3の消火器なら能力単位の計算上は2本で6ですが、配置条件や追加基準は別途確認します。
例3:物品販売店舗300㎡、うち地階50㎡
木造で所定の2倍条件を満たさない(四)項の物品販売店舗なら、基本の必要値は次のとおりです。
300㎡ ÷ 100㎡ = 3
地階50㎡をもう一度50㎡で割って「1能力単位」を加える計算はしません。ただし、消火器具は階ごとに各部分から歩行距離20m以下となるよう配置するため、地階にも適切な配置が必要です。能力単位の合計と配置を別々に確認する例です。
例4:電気設備のある場所180㎡
電気設備のある場所が180㎡なら、100㎡以下ごとに1個なので、電気設備に適応する消火器を2個設けます。建物全体の基本能力単位を満たしていても、この追加基準を省略できません。
確認手順
- 設置対象を確定:施行令第10条第1項のどの号に該当するか確認する
- 対象面積を確定:防火対象物全体の延べ面積か、用途部分・階の床面積かを確認する
- 用途区分を確定:50㎡・100㎡・200㎡のどの区分か確認する
- 2倍条件を確認:特定主要構造部の耐火構造と難燃材料仕上げの両方を確認する
- 適応する器具を選ぶ:対象物・火災に適応する器具の能力単位合計を必要値以上にする
- 追加基準を確認:危険物、指定可燃物、電気設備、多量の火気を使用する場所を確認する
- 配置を確認:階・対象場所ごとの歩行距離20m以下を確認する
- 条例等を確認:市町村条例や所轄消防署の運用を確認する
オリジナル理解度チェック
問題1
算定基準面積が50㎡となる用途はどれですか。第6条第2項の2倍条件は満たさないものとします。
- 公会堂
- 劇場
- 飲食店
- 事務所
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2.劇場。劇場は(一)項イで50㎡区分です。公会堂は(一)項ロで100㎡区分です。
問題2
算定基準面積を2倍にできる条件として適切なものはどれですか。
- 特定主要構造部が耐火構造であれば、仕上げを問わない
- 難燃材料で仕上げれば、構造を問わない
- 特定主要構造部の耐火構造と所定の難燃材料仕上げの両方を満たす
- 準耐火構造であれば必ず2倍になる
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3.両方を満たす。第6条第2項の二条件を分けて確認します。
問題3
地階・無窓階・3階以上の階の50㎡基準について適切な説明はどれですか。
- 50㎡ごとに能力単位1を常に加算する
- 施行令第10条第1項第5号の設置対象判定である
- 大型消火器だけの基準である
- 電気設備だけの基準である
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2.設置対象判定。能力単位の付加計算ではありません。
問題4
電気設備がある場所の床面積が180㎡の場合、第6条第4項の追加基準として必要な消火器の個数はどれですか。
- 1個
- 2個
- 3個
- 能力単位だけで決まり、個数基準はない
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2.2個。電気設備に適応する消火器を、その場所の床面積100㎡以下ごとに1個設けます。
問題5
基本の能力単位合計を満たした後に必要な確認はどれですか。
- 1か所へまとめれば他の確認は不要
- 購入価格だけを比較する
- 追加基準と階・対象場所ごとの歩行距離を確認する
- AとBの数値を足して大きいものを選ぶ
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3.追加基準と歩行距離を確認する。能力単位だけでは設置基準を満たしたことになりません。
まとめ
- 算定基準面積は、(一)項イ等の50㎡、(一)項ロ・(三)〜(六)項等の100㎡、(七)・(八)・(十)・(十一)・(十五)項の200㎡に分かれる
- 特定主要構造部の耐火構造と所定の難燃材料仕上げを両方満たすと、算定基準面積は2倍になる
- 必要な能力単位合計は、対象面積を算定基準面積で除した数以上とする
- 地階・無窓階・3階以上の50㎡基準を、追加能力単位の計算と混同しない
- 危険物・指定可燃物、電気設備、多量の火気、歩行距離の基準を別に確認する
消防用設備等の設置・維持の法体系は「消防用設備等の設置及び維持」も参照してください。
一次情報・公式資料
- e-Gov法令検索「消防法施行令」第9条・第10条
- e-Gov法令検索「消防法施行規則」第6条・第7条
- e-Gov法令検索「消火器の技術上の規格を定める省令」第3条・第4条
- 日本消火器工業会「消火器の設置義務」
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