消防設備士と危険物取扱者は、どちらも消防法に関係する資格ですが、対象とするものが異なります。消防設備士は建物の消防用設備等、危険物取扱者はガソリン・灯油・化学薬品など法令上の危険物を扱う資格です。
先に取る資格の決め方
- 消防設備の点検・整備・工事をしたい → 仕事内容に対応する類の消防設備士
- ガソリン、灯油、薬品などを貯蔵・取り扱う仕事をしたい → 対象物質に対応する危険物取扱者
- 設備管理など両方が関係する仕事 → 求人の担当業務と必要資格を確認して順番を決める
消防設備士と危険物取扱者の違い
| 比較項目 | 消防設備士 | 危険物取扱者 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 消火設備、警報設備、避難設備、消火器など | 法令で定める第1類から第6類の危険物 |
| 資格の種類 | 甲種・乙種(設備の類ごと) | 甲種・乙種・丙種 |
| 主な業務 | 対応設備の工事・整備・点検(免状区分による) | 対応する危険物の取扱い、定期点検、立会い(免状区分による) |
| 受験資格 | 甲種は必要、乙種は不要 | 甲種は必要、乙種・丙種は不要 |
| 試験方法 | 筆記と実技(甲種特類を除く) | 筆記 |
| 試験手数料 | 甲種6,600円、乙種4,400円 | 甲種7,200円、乙種5,300円、丙種4,200円 |
試験手数料は2026年7月に消防試験研究センターが掲載している金額です。申請前には、受験する支部の最新案内で日程、受付期間、手数料、必要書類を確認してください。
消防設備士は建物の消防用設備等を扱う
消防設備士が扱うのは、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、泡消火設備、自動火災報知設備、避難器具、消火器などです。免状の類によって対象設備が分かれています。
甲種消防設備士は、免状に対応する消防用設備等の工事・整備・点検を行えます。乙種消防設備士は、対応設備の整備・点検を行えます。乙種免状だけで資格が必要な工事を行えるわけではありません。
| 例 | 対象設備 |
|---|---|
| 第1類 | 屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備など |
| 第4類 | 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備など |
| 第6類 | 消火器 |
どの類を取るかは「一番人気の類」ではなく、担当したい設備から決めます。消防設備士の仕事内容と求人の確認方法は「消防設備士の仕事内容・なり方」で解説しています。
危険物取扱者は危険物の貯蔵・取扱いに関わる
危険物取扱者が扱うのは、消防法で第1類から第6類に分類される危険物です。一定数量以上の危険物を貯蔵し、または取り扱う化学工場、ガソリンスタンド、石油貯蔵タンク、タンクローリーなどで必要になります。
| 免状 | 扱える範囲 | 立会い |
|---|---|---|
| 甲種 | すべての種類の危険物 | できる |
| 乙種 | 免状を取得した類の危険物 | できる |
| 丙種 | ガソリン、灯油、軽油、重油など指定された危険物 | できない |
甲種・乙種危険物取扱者が立ち会えば、免状を持たない人も対象危険物の取扱いと定期点検を行える場合があります。丙種は、指定された危険物を自ら取り扱い、定期点検することはできますが、無資格者の取扱作業に立ち会うことはできません。
危険物の6分類
| 類 | 性質 | 代表例 |
|---|---|---|
| 第1類 | 酸化性固体 | 塩素酸塩類、無機過酸化物など |
| 第2類 | 可燃性固体 | 硫黄、鉄粉、金属粉など |
| 第3類 | 自然発火性物質・禁水性物質 | カリウム、黄りんなど |
| 第4類 | 引火性液体 | ガソリン、灯油、軽油、アルコール類など |
| 第5類 | 自己反応性物質 | 有機過酸化物、硝酸エステル類など |
| 第6類 | 酸化性液体 | 過塩素酸、過酸化水素、硝酸など |
受験資格は両資格とも甲種で必要
消防設備士は甲種に受験資格があり、乙種は誰でも受験できます。甲種消防設備士の受験資格には、指定学科の卒業・必要単位の修得、一定の実務経験、所定の資格など複数の区分があります。
危険物取扱者も、甲種には受験資格があります。主な区分は、化学に関する学科等の卒業、化学科目15単位以上の修得、乙種免状取得後の実務経験2年以上、指定された4種類以上の乙種免状、化学に関する修士・博士の学位です。乙種と丙種は誰でも受験できます。
受験資格に注意:甲種危険物取扱者には受験資格があります。受験する場合は、申請前に公式の受験資格と証明書類を確認してください。
試験方法は実技の有無が大きく異なる
消防設備士試験は、甲種特類を除き、四肢択一式の筆記試験と、写真・イラスト・図面などを使う記述式の実技試験があります。甲種第1類から第5類には鑑別等と製図、乙種には鑑別等が出題されます。
危険物取扱者試験は筆記試験です。試験科目と問題数は甲種・乙種・丙種で異なり、保有免状などによる一部免除が適用される場合もあります。
どちらが簡単かを一律には決められません。受験する種類、理科や法令の予備知識、実技形式への慣れ、科目免除の有無が人によって異なるからです。固定の勉強時間や合格率だけで決めず、公式の科目表と公開問題を見て必要な学習量を判断してください。
年収ではなく求人の仕事内容を比較する
消防設備士と危険物取扱者は、それぞれ一つの職業名ではありません。消防設備士は点検会社、工事会社、ビル設備管理などで使われ、危険物取扱者はガソリンスタンド、化学工場、倉庫、設備管理、輸送関連などで使われます。
そのため、資格名だけを基準に全国一律の固定年収で比較することはできません。同じ地域、雇用形態、担当業務で、基本給、手当、固定残業代、夜勤、休日、必要経験を比べてください。
資格手当も会社ごとの賃金規程で決まります。免状を持っているだけで支給されるのか、対象業務へ選任・配置された場合だけか、複数資格を合算するのかを求人票と就業規則で確認します。
どちらを先に取るかは希望する仕事から逆算する
消防設備士を先に検討する人
- 消防設備の点検・整備・工事を担当したい
- 消防設備会社や防災設備部門への応募を考えている
- 求人に第1類、第4類、第6類など必要な類が明記されている
- 現在の仕事で担当設備が決まっている
危険物取扱者を先に検討する人
- ガソリン、灯油、軽油、薬品などを扱う仕事を希望している
- ガソリンスタンド、危険物施設、化学・製造・貯蔵関連の求人へ応募する
- 求人に危険物の類や対象物質が明記されている
- 勤務先で危険物の取扱い・立会い・定期点検を担当する予定がある
両方を取る場合も順番は固定しない
設備管理などでは、消防設備と危険物施設の両方に関わる職場があります。ただし、両方を持てば必ず採用や昇給に有利になるわけではありません。求人の必須資格、実際の担当設備、危険物の種類、会社の手当規程を確認してください。
「危険物乙4→消防設備士乙6→甲4」が全員に最適という根拠はありません。自動火災報知設備の仕事を目指す人、消火器点検をする人、ガソリンスタンドで働く人では必要な資格が違います。甲種消防設備士には受験資格もあるため、希望職種と受験可能な種類を照合して順番を決めます。
関連資格を組み合わせる考え方は「消防設備士と相性のよい資格」で解説しています。
取得後の講習義務も別々に管理する
消防設備士は、業務への従事の有無にかかわらず、定められた期間ごとに都道府県知事が行う消防設備士講習を受ける必要があります。初回は免状交付後の最初の4月1日から2年以内、2回目以降は受講後の最初の4月1日から5年以内です。
危険物取扱者は、化学工場やガソリンスタンドなどで危険物の取扱作業に従事している人に、保安講習の受講義務があります。免状を持っているだけで取扱作業に従事していない場合と扱いが異なるため、勤務状況と都道府県の案内を確認してください。
両方の免状を持っている場合も、片方の講習で他方を兼ねることはできません。免状の交付日、従事開始日、前回受講日を別々に記録します。消防設備士講習の期限は「消防設備士講習の受講期限と区分」で詳しく解説しています。
よくある質問
高校生でも受験できますか
消防設備士乙種、危険物取扱者乙種・丙種は受験資格がなく、年齢制限もありません。甲種はそれぞれ受験資格が必要なため、自分が資格要件を満たすかを公式案内で確認します。
危険物乙種第4類で消火器を点検できますか
危険物乙種第4類は引火性液体を扱う資格であり、消火器の整備・点検を行う消防設備士乙種第6類とは別です。危険物免状だけで、消防設備士として消火器を整備・点検できるようにはなりません。
消防設備士乙種第6類でガソリンを取り扱えますか
乙種第6類消防設備士は消火器に対応する資格です。ガソリンなど第4類危険物の取扱資格にはならないため、業務に応じて危険物取扱者免状が必要です。
片方の免状があれば、もう片方の試験が免除されますか
片方の免状を取得しただけで、もう片方の免状へ自動的に切り替わることはありません。受験資格や試験科目の一部免除は、試験の種類と保有資格ごとに細かく定められています。申請する試験の公式案内で対象資格と証明書類を確認してください。
試験を実施する団体は同じですか
どちらも一般財団法人消防試験研究センターが試験を実施しています。ただし、試験日、会場、受付期間、実施する種類は都道府県支部や試験回で異なります。
まとめ
- 消防設備士は建物の消防用設備等、危険物取扱者は法令上の危険物を扱う資格
- 消防設備士の甲種は工事・整備・点検、乙種は整備・点検を対応する類で行える
- 危険物取扱者の甲種は全類、乙種は取得した類、丙種は指定された危険物を扱う
- 両資格とも甲種には受験資格があり、消防設備士乙種と危険物乙種・丙種は誰でも受験できる
- 固定年収や一律のおすすめ順ではなく、希望する仕事と求人の必要資格から選ぶ
- 取得後の講習制度も別なので、それぞれの期限と従事状況を管理する
参考にした公式情報
- 消防試験研究センター「消防設備士について」
- 消防試験研究センター「甲種消防設備士試験の受験資格」
- 消防試験研究センター「消防設備士試験の科目・問題数」
- 消防試験研究センター「消防設備士試験の方法・手数料」
- 消防試験研究センター「危険物取扱者について」
- 消防試験研究センター「危険物取扱者試験」
- 消防試験研究センター「甲種危険物取扱者試験の受験資格」
- 消防試験研究センター「危険物取扱者試験の科目・問題数」
- 総務省消防庁「消防設備士講習の実施細目」
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