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消防設備士と危険物取扱者の違い|どっちを取るべき?仕事内容・年収を比較

結論から言います ── 消防設備士は「設備」、危険物取扱者は「物質」の資格です

消防設備士と危険物取扱者。どちらも「消防」に関係する国家資格ですが、扱うものがまったく違います。

  • 消防設備士 → 建物に設置された消防用設備(火災報知器・スプリンクラー・消火器など)の点検・整備・工事を行う資格
  • 危険物取扱者 → ガソリン・灯油・化学薬品などの危険物を安全に貯蔵・取り扱いするための資格

ひとことで言えば、消防設備士は「建物の安全を守る設備のプロ」、危険物取扱者は「危険な物質を扱うプロ」です。根拠となる法律も、試験の形式も、活躍する現場も異なります。

この記事では、両方の資格を比較しながら「自分にはどちらが向いているのか」「両方取るならどの順番がいいのか」を解説していきます。

📌 この記事でわかること

  • 消防設備士と危険物取扱者の6項目比較
  • それぞれの仕事内容と活躍現場
  • 年収・資格手当の違い
  • タイプ別「どっちを先に取るべき?」判定
  • ダブルライセンス戦略とおすすめ取得順
  • 受験資格・試験費用・勉強時間の完全比較

基本情報を比較

まずは2つの資格の基本スペックを並べてみましょう。

項目 消防設備士 危険物取扱者
根拠法令 消防法 第17条の5 消防法 第13条
対象 消防用設備等の工事・整備・点検 危険物の貯蔵・取扱い・立会い
資格区分 甲種・乙種 甲種・乙種・丙種
種類数 甲種5類+乙種7類 甲種1+乙種6類+丙種1
試験形式 筆記+実技(鑑別・製図) 筆記のみ(マークシート)
受験資格 甲種は制限あり(学歴・実務経験等) 全類とも制限なし(誰でも受験可)
試験手数料 甲種5,700円/乙種3,800円 甲種6,600円/乙種4,600円/丙種3,700円
免状交付料 2,900円 2,900円
義務講習 初回2年・以降5年ごと 初回3年・以降3年ごと(危険物取扱作業従事者)
試験回数 年3〜10回(都道府県による) 年3〜6回(都道府県による)

最大の違いは試験形式です。消防設備士は筆記に加えて実技試験(鑑別・製図)があるため、危険物取扱者よりも試験対策に時間がかかる傾向があります。一方、危険物取扱者は甲種を含めて全類が受験資格なしで受けられるのが特徴です。


仕事内容の違い

資格の内容がわかったところで、実際にどんな仕事をするのかを見てみましょう。

消防設備士の仕事

消防設備士は、建物に設置されている消防用設備の点検・整備・工事を行います。

  • オフィスビルや商業施設の火災報知設備を定期点検する
  • スプリンクラー設備の配管工事を行う
  • 消火器の点検・交換をする
  • 避難はしごや救助袋の整備を行う

活躍の場は、ビルメンテナンス会社・消防設備の専門会社・建設会社などです。建物がある限り仕事がなくならないので、安定した需要があります。詳細は「消防設備士とは?仕事内容・年収・なり方」を参照。

危険物取扱者の仕事

危険物取扱者は、ガソリン・灯油・化学薬品などの危険物の取扱い・保安監督・立会いを行います。

  • ガソリンスタンドで燃料の受入れや給油作業の監督をする
  • 化学工場で薬品の貯蔵・管理を担当する
  • タンクローリーの運転手として危険物を輸送する
  • 塗料メーカーや印刷工場で引火性液体を管理する
  • ビル管理の現場で地下重油タンクを管理する(ビルメン4点セット)

特に乙種4類(引火性液体)は、ガソリンスタンドのアルバイトでも求められることがあるほど需要が高い資格です。

危険物の6分類

対象 代表例
第1類 酸化性固体 塩素酸塩類、過マンガン酸塩
第2類 可燃性固体 赤りん、硫黄、金属粉
第3類 自然発火性物質・禁水性物質 ナトリウム、リチウム
第4類 ⭐ 引火性液体 ガソリン・灯油・軽油(最も人気)
第5類 自己反応性物質 有機過酸化物、ニトロ化合物
第6類 酸化性液体 過酸化水素、硝酸

※甲種はすべての危険物を扱える。乙種は取得した類のみ。丙種は乙4の一部(ガソリン・灯油・軽油の取扱)のみ。


年収を比較

気になる年収の目安も比較してみましょう。

項目 消防設備士 危険物取扱者
年収の目安 350〜550万円 300〜450万円
独立・上位の場合 独立開業で700万円超も 他資格との組み合わせで上積み
資格手当の相場 月3,000〜10,000円 月1,000〜5,000円

消防設備士のほうが年収レンジはやや高めです。その理由は、消防設備士は「独占業務資格」だからです。消防用設備の工事・整備は消防設備士でなければ行えないため、資格の希少価値が高くなります。

一方、危険物取扱者は単体よりも他の資格と組み合わせて活きるタイプの資格です。たとえばボイラー技士やフォークリフト免許と合わせて持っていると、工場やプラントでの採用に有利になります。


試験の難易度・勉強時間の比較

項目 消防設備士(甲4) 消防設備士(乙6) 危険物乙4
合格率 約30〜35% 約38〜42% 約30〜35%
勉強時間 100〜150時間 50〜80時間 40〜60時間
実技有無 あり(記述+製図) あり(記述) なし(マークシートのみ)
受験資格 要(学歴等) なし なし
難易度体感 ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★☆☆☆

危険物乙4が最も取りやすいというのが結論。年間約23万人が受験する国家資格で、参考書も豊富。資格試験の"入門"として最適です。消防設備士の勉強時間は、より詳しくは「独学・勉強時間の目安」を参照。


どっちを先に取るべき?

「両方気になるけど、どっちから取ればいいの?」という方のために、タイプ別のおすすめをまとめました。

選択フローチャート

あなたの目標は?
建物の安全を守りたい
消防設備士(乙6)から
資格試験に慣れたい
危険物乙4から
ガソスタ等で働きたい
危険物乙4一択
ビルメンで働きたい
両方(乙4→乙6→甲4)

消防設備士を先に取るべき人

  • ビルメンテナンス業界で働きたい
  • 消防設備の点検・工事の仕事に興味がある
  • 独立開業も将来的に視野に入れている
  • 電気工事士の資格をすでに持っている(科目免除が使える)

危険物取扱者を先に取るべき人

  • ガソリンスタンドや化学工場で働きたい
  • まずは取りやすい資格から始めたい(乙4は合格率約30%で挑戦しやすい)
  • タンクローリーの運転など物流系の仕事を目指している
  • 受験資格の心配をせずにすぐ受けたい

両方取るならこの順番がおすすめ

  1. 危険物取扱者 乙種4類 ── 筆記のみで取りやすく、資格試験の勉強に慣れるのに最適。求人需要も高い
  2. 消防設備士 乙種6類 ── 消火器の点検ができるようになる。消防設備士の入門として最適(詳しくは「乙種6類ロードマップ」を参照)
  3. 消防設備士 甲種4類 ── 火災報知設備の工事・整備ができる。甲種なので業務範囲が広く、年収アップにつながりやすい

この順番なら、難易度が段階的に上がるので無理なくステップアップできます。

💡 両方取る場合の通信講座活用
独学で3資格を順に取るには1年〜1年半かかります。通信講座を使えば8〜10か月に圧縮可能。


ダブルライセンスの強み

消防設備士と危険物取扱者の両方を持っていると、ビルメンテナンス業界で特に重宝されます。

ビルメンテナンスの現場では、建物の消防設備を点検しつつ、地下の危険物貯蔵所(ボイラー用の重油タンクなど)の管理も任されることがあります。両方の資格があれば、1人で幅広い業務に対応できるため、会社からの評価が上がりやすいのです。

注意点として、消防設備士と危険物取扱者の間に科目免除の関係はありません。同じ「消防法」がベースの資格ではありますが、試験の実施団体も出題範囲もまったく別系統です。それぞれ独立して勉強する必要があります。

ダブルライセンスで刺さる求人例

  • ビル管理・ビルメン求人:月給22〜28万円+資格手当各3,000〜5,000円
  • 工場の設備管理職:月給25〜32万円+両資格手当合算5,000〜10,000円
  • 化学プラントの保安要員:年収450〜600万円、甲4+危険物甲種保持者は厚遇

ダブルライセンスの戦略についてもっと知りたい方は、「消防設備士のダブルライセンス戦略」の記事も参考にしてみてください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 高校生でも両方の資格を取れる?

取れます。消防設備士の乙種・危険物取扱者の全類は受験資格なし。高校生で甲種危険物を取る学生も多いです(将来化学系の進学を目指す層)。消防設備士の甲種だけは学歴等の受験資格が必要です。

Q2. どちらの試験のほうが頻繁に開催されている?

危険物取扱者のほうが開催頻度が高い傾向(大都市では年6回)。消防設備士も東京・大阪などは年10回以上ですが、地方では年3回程度。

Q3. 「消防設備士のほうが難しい」って本当?

実技試験がある分、勉強時間は多めに必要です。ただし合格率は同程度(30〜35%)。消防設備士は「記述+製図対策」がネック、危険物は「暗記中心」という差です。

Q4. 危険物乙4と消防設備士乙6、どちらが仕事の幅が広い?

用途による。乙4はガソリン取扱い現場で"必須"、乙6は消防設備保守業務で"必須"。どちらも独占業務資格で希少性あり。ビルメンならどちらも欲しい。

Q5. 消防設備士と危険物取扱者の両方の義務講習を受けるのは大変?

別々の講習になります。消防設備士は5年ごと、危険物は3年ごと。両方保持者は講習頻度が合計年1回以上になる計算。負担は覚悟が必要。

Q6. 試験の実施団体は同じ?

はい、どちらも一般財団法人 消防試験研究センターです。併願受験も可能(日程が重ならない場合)。

Q7. 電気工事士の資格は両方の科目免除に使える?

消防設備士の甲4・乙7には使えますが、危険物取扱者の科目免除には使えません。危険物での科目免除は「火薬類取扱保安責任者」等のみ。

Q8. 法定点検業務で求められるのはどっち?

消防設備士のほうが直接関係します。法定点検は消防設備士でなければ行えません(消防法第17条の3の3)。危険物取扱者は「取扱い立会い」が主で、点検業務とは別。


まとめ

消防設備士と危険物取扱者の違いを最後にもう一度整理します。

比較項目 消防設備士 危険物取扱者
扱うもの 消防用設備 危険物(ガソリン等)
仕事内容 設備の点検・整備・工事 危険物の取扱い・立会い
試験の難しさ 実技試験あり(やや難) 筆記のみ(取りやすい)
年収の目安 350〜550万円 300〜450万円
おすすめの人 ビルメン・設備工事志望 ガソスタ・工場志望

どちらも安定した需要のある国家資格です。迷ったら、まず危険物乙4で資格試験に慣れてから、消防設備士にチャレンジするのが王道ルートです。

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参考リンク(公式情報)


理解度チェック

問題1 消防設備士と危険物取扱者の違いとして、正しいものはどれか。

(1)両方とも建物の消防設備を点検する資格である。
(2)消防設備士は「設備」の資格、危険物取扱者は「物質」の資格という違いがある。
(3)両方とも根拠法令は労働安全衛生法である。
(4)両方とも経済産業省が所管している。

解答を見る

正解:(2)
消防設備士は消防用設備の工事・整備・点検、危険物取扱者はガソリン等の危険物の貯蔵・取扱いを行う資格です。(1)危険物取扱者は物質を扱う資格で点検業務とは異なります。(3)両方とも根拠は「消防法」です。(4)所管は総務省消防庁です。

問題2 試験形式・受験資格について正しいものはどれか。

(1)消防設備士は全類とも筆記のみで実技試験はない。
(2)危険物取扱者の甲種は実務経験がないと受験できない。
(3)消防設備士は筆記+実技(鑑別・製図)、危険物取扱者は筆記のみ(マークシート)。
(4)両方とも受験資格の制限はない。

解答を見る

正解:(3)
消防設備士は筆記に加え実技試験があり、危険物取扱者は筆記のみです。(1)実技試験があります。(2)危険物取扱者の甲種は学歴・化学系単位・乙種4類以上を4種類取得など受験資格があります(一部)。(4)消防設備士の甲種は受験資格あり。

問題3 両方の資格を取得する場合におすすめの順序として、最も合理的なものはどれか。

(1)消防設備士甲種4類 → 危険物取扱者乙種4類 → 消防設備士乙種6類
(2)危険物取扱者乙種4類 → 消防設備士乙種6類 → 消防設備士甲種4類
(3)消防設備士甲種特類 → 危険物取扱者丙種 → 消防設備士乙種6類
(4)消防設備士と危険物取扱者は順序を考える必要はなく、同時並行で取得すべき

解答を見る

正解:(2)
難易度が段階的に上がる順(乙4→乙6→甲4)が王道です。乙4で資格試験に慣れ、乙6で消防設備士の入門、甲4で業務範囲を広げる流れ。(1)は順序が不自然。(3)は甲種特類が最難関なので無理。(4)は同時並行は勉強時間の集中投下が難しくなります。

問題4【応用】 ビルメンテナンス業界でダブルライセンスを活かしたい場合、最も効果的な組み合わせはどれか。

(1)消防設備士甲種4類+危険物取扱者乙種4類
(2)消防設備士甲種特類+危険物取扱者丙種
(3)消防設備士乙種7類のみ(漏電警報器)
(4)危険物取扱者甲種のみ

解答を見る

正解:(1)
ビルメンの現場では、自動火災報知設備(甲4)と地下重油タンク(乙4)の両方を管理するため、この組み合わせが最も実用的です。(2)甲種特類は取得条件が厳しく丙種は範囲が狭い。(3)乙7単体は汎用性が低い。(4)ビルメンでは消防設備の点検業務も必須です。

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