甲種2類

泡消火設備の設置義務と技術基準|施行令第13条・第15条をわかりやすく解説

結論から言います。

泡消火設備の設置義務施行令第13条で定められています。駐車場・道路・危険物施設など「油火災のリスクがある場所」が対象です。そして泡消火設備の技術基準(放射量・水源・薬剤量など)は施行令第15条施行規則第18条で規定されています。

ポイントは、施行令第13条は「水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン・粉末」の5設備に共通の条文だということ。この5つのうちどれを選ぶかは設置者の判断ですが、泡消火設備が選ばれやすい場所には明確な理由があります。

この記事で学ぶこと
設置義務
施行令第13条
どの建物に必要か
面積基準の判定
技術基準
施行令第15条
放射量・水源・薬剤量
方式ごとの基準値
設備選定
なぜ泡が選ばれるか
水噴霧との使い分け
5設備の選択関係

設置義務の全体像 ── 施行令第13条の構造

「水噴霧消火設備等」の5設備

施行令第13条は、次の5つの消火設備をまとめて規定しています。

  • 水噴霧消火設備
  • 泡消火設備(この記事のメイン)
  • 不活性ガス消火設備
  • ハロゲン化物消火設備
  • 粉末消火設備

重要なのは、この5つは「いずれか1つを設置すればよい」という選択関係にあることです。たとえば駐車場に泡消火設備を設置してもよいし、水噴霧消火設備を設置してもよい。法令上はどれでもOKです。

ただし、実際には設置場所の特性に合わせて最適な設備が選ばれることになります。

甲1との関連
水噴霧・屋外消火栓・動力消防ポンプの設置義務と技術基準」で施行令第13条の設置対象を学びました。甲1では水噴霧の視点で解説しましたが、設置対象そのものは5設備共通です。この記事では泡消火設備の視点で、設置対象を改めて整理します。

設置対象 ── どこに設置が必要か

施行令第13条で定められている主な設置対象は、次の4つのカテゴリに整理できます。

対象 面積基準
駐車場
別表第一(13)項
地階・2階以上:200㎡以上
1階:500㎡以上
屋上:300㎡以上
道路
トンネル等
屋上を除き 600㎡以上
舞台部
(1)〜(4)項等
床面積 500㎡以上
指定可燃物
危険物施設等
指定数量の一定倍数以上
を貯蔵・取扱い

なぜ地階の駐車場は基準が厳しいのか

駐車場の面積基準を見ると、地階・2階以上は200㎡なのに対して1階は500㎡、屋上は300㎡と差があります。

これは火災時の危険度の違いが理由です。

  • 地階 ── 煙と熱がこもりやすく、避難経路が限られる。最も危険なので基準が厳しい
  • 2階以上 ── 上階への延焼リスクがある。避難にも時間がかかる
  • 屋上 ── 煙が拡散しやすく、延焼リスクは低い。ただし避難の問題があるため300㎡
  • 1階 ── 避難しやすく、消防隊もアクセスしやすい。基準が最も緩い

駐車場では車のガソリンが油火災の原因になります。地下駐車場で油火災が発生すると、密閉空間に黒煙が充満して避難困難に陥る ── だから200㎡という厳しい基準が設けられているのです。

なぜ泡消火設備が選ばれるのか ── 5設備の使い分け

施行令第13条の設置対象には5設備のどれでも設置できるのに、なぜ泡消火設備が選ばれる場所があるのでしょうか。

設備選定の考え方

場所 よく選ばれる設備 理由
駐車場 ・水噴霧 油火災対応+人がいる空間で安全
石油タンク 油面を泡で覆い続けられる
航空機格納庫 大面積の油火災に対応
電気室 不活性ガス・粉末 水や泡は電気機器を破損させる
通信機器室 不活性ガス 消火後の汚損が最小限

泡消火設備が選ばれるのは「油火災」+「人がいる可能性」+「広い面積」という条件が揃う場所です。

  • 油火災に強い ── 「泡消火設備の全体像と消火原理」で解説したとおり、泡は油面を覆って窒息消火する
  • 人体に安全 ── 不活性ガスのように酸素濃度を下げないので、人がいる空間でも使える
  • 広い面積をカバー ── 泡は流動して広がるため、フォームヘッドや固定泡放出口から放射すれば広範囲を覆える

逆に、電気室や通信機器室では泡消火設備は使いません。泡に含まれる水分が電気機器を壊してしまうからです。

技術基準の全体像 ── 施行令第15条・施行規則第18条

設置義務(どこに)が決まったら、次は技術基準(どうやって設置するか)です。泡消火設備の技術基準は施行令第15条と施行規則第18条で定められています。

技術基準は方式ごとに異なります。「泡消火設備の構造と機能」で学んだ4つの方式それぞれに、放射量・水源・放射時間などの数値基準があります。

技術基準の4方式
フォームヘッド
駐車場
航空機格納庫
固定泡放出口
石油タンク
危険物施設
高発泡
倉庫
大空間
移動式
小規模施設
泡消火栓

フォームヘッド方式の技術基準

フォームヘッド方式は、駐車場や航空機格納庫など天井がある屋内空間で使われる方式です。天井に取り付けたフォームヘッド(開放型)から一斉に泡を放射して、床面全体を泡で覆います。

放射量の基準

フォームヘッドの放射量
防護面積1㎡あたり 6.5 L/min 以上
泡水溶液の量(泡ではなく液の量で計算する)

たとえば、防護区域の面積が50㎡なら、必要な泡水溶液の放射量は:

50㎡ × 6.5 L/min・㎡ = 325 L/min

水源の容量

水源は、最大の防護区域に必要な泡水溶液を10分間放射できる量が必要です。

水源 = 放射量 × 10分

上の例なら、325 L/min × 10分 = 3,250 L(3.25 m³)が必要です。

ヘッドの配置

  • 防護対象物の各部分からヘッドまでの水平距離が一定以下になるよう配置する
  • 一斉開放弁で制御 ── 火災感知で弁が開き、区域内の全ヘッドから同時に放射
  • 1つの放射区域の面積は原則として防護面積以上
なぜ「泡水溶液」で計算するのか
放射量の基準は「泡」の量ではなく「泡水溶液」の量です。泡は空気を含んで膨らむので体積が大きくなりますが、実際にポンプで送る液量で計算しないと、水源やポンプの設計ができません。「泡消火設備の全体像と消火原理」で学んだ膨張比はあくまで泡の性質を示す指標であり、設備の計算では泡水溶液の量を使います。

固定泡放出口方式の技術基準

固定泡放出口方式は、石油タンクなどの危険物貯蔵施設に使われる方式です。タンクの上部(液面上注入方式)またはタンクの底部(液面下注入方式)から泡を放出して、油面を覆います。

液面上注入方式

タンクの上から泡を流し込み、油面の上に泡を広げる方式です。最もオーソドックスな方式で、すべての泡消火薬剤が使用可能です。

技術基準のポイントは、使用する泡消火薬剤によって放射率と放射時間が異なることです。

薬剤 放射率 放射時間
たん白泡 4 L/min・㎡ 30分
フッ素たん白泡 4 L/min・㎡ 20分
水成膜泡 4 L/min・㎡ 10分
合成界面活性剤泡 8 L/min・㎡ 10分

この表には明確な理由があります。

  • たん白泡 ── 耐熱性・耐油性が非常に高く、放射率は4 L/min・㎡で十分。ただし流動性が低い(ネバネバして広がりにくい)ため、油面全体を覆うのに30分と長い時間が必要
  • フッ素たん白泡 ── たん白泡にフッ素系界面活性剤を加えた改良版。流動性が改善されているため、放射時間を20分に短縮できる
  • 水成膜泡 ── フッ素系界面活性剤が主成分で、油面に薄い水の膜(アクアスフィルム)を形成する。即効性が高いため10分で済む
  • 合成界面活性剤泡 ── 耐熱性が低く、油面上で泡が壊れやすい。そのため放射率を8 L/min・㎡に倍増させて、大量の泡で補う必要がある

泡消火薬剤の種類と性質」で学んだ各薬剤の特徴が、そのまま技術基準の数値に反映されているわけです。

液面下注入方式

タンクの底部から泡を注入し、油の中を泡が浮き上がって油面を覆う方式です。

液面下注入方式の薬剤制限
液面下注入方式に使用できるのはフッ素たん白泡水成膜泡の2種類のみ。たん白泡と合成界面活性剤泡は使用できません。

理由は「泡消火設備の構造と機能」で解説したとおり、油の中を通過するため高い耐油性が必要だからです。フッ素系の薬剤だけが、油中を通っても泡が壊れずに浮上できます。

高発泡方式の技術基準

高発泡方式は、膨張比80〜1,000倍の大きな泡で防護区画を埋め尽くす方式です。倉庫や大空間の消火に使われます。

全域放出方式と局所放出方式

項目 全域放出方式 局所放出方式
考え方 防護区画全体を泡で埋める 防護対象物だけを泡で覆う
必要泡量 区画の容積に基づいて計算 対象物を包む体積に基づいて計算
使用薬剤 合成界面活性剤泡のみ 合成界面活性剤泡のみ
安全対策 放出前に警報・避難確認が必要 対象物周辺の安全確認

全域放出方式は、区画全体を泡で埋めるためガス消火設備と似た考え方です。ただしガスと違い、泡は人体に対する毒性はありません。問題は泡の中では呼吸や視界が確保できないことです。だから放出前の警報と避難確認が必要になります。

高発泡は合成界面活性剤泡のみ

高発泡方式に使用できるのは合成界面活性剤泡のみです。たん白泡・フッ素たん白泡・水成膜泡は低発泡(膨張比20未満)でしか発泡できないため、膨張比80〜1,000倍の高発泡は不可能です。

移動式泡消火設備の技術基準

移動式は、泡消火栓箱からホースとノズルを取り出して人が操作する方式です。屋内消火栓設備の「泡バージョン」と考えるとわかりやすいです。

基本スペック

  • ノズル放射量:泡水溶液の量で基準が定められている
  • ホース接続口:防護対象物の各部分から歩行距離15m以内に設置
  • 水源:最大使用個数分の泡水溶液を15分間放射できる量
固定式と移動式の水源の違い
固定式は水源を10分間分確保するのに対して、移動式は15分間分です。移動式は人が操作するため、起動までに時間がかかる+放射方向にムラが出やすい。その分、長い放射時間を確保して消火の確実性を高めています。甲1の屋内消火栓設備(水源20分間分)と同じ考え方です。

泡消火薬剤の貯蔵量

泡消火設備には水だけでなく泡消火薬剤も必要です。薬剤の貯蔵量は、水源の容量と混合比率から計算します。

薬剤量の考え方
薬剤量 = 水源容量 × 混合比率

泡消火薬剤の種類と性質」で学んだとおり、混合比率は薬剤の種類によって異なります。たとえば混合比率3%の薬剤なら、水源10,000 Lに対して薬剤は300 Lが必要です。

共通の技術基準

方式に関わらず、泡消火設備に共通する技術基準もあります。

加圧送水装置

泡水溶液を配管で送るために加圧送水装置が必要です。甲1の水系消火設備と同じく、次の3方式があります。

  • ポンプ方式 ── 最も一般的。電動ポンプで泡水溶液を加圧送水する
  • 高架水槽方式 ── 高い位置の水槽から重力で送水する
  • 圧力タンク方式 ── 加圧したタンクから送水する

詳しくは「加圧送水装置と附属装置」を参照してください。泡消火設備でもポンプ方式が主流です。

送水口

消防隊が外部からポンプ車で泡水溶液を送り込むための送水口を設置します。双口形で、地盤面から0.5m以上1m以下の位置に設けます。

非常電源

固定式の泡消火設備は、非常電源を設置して停電時にも放射できるようにします。

水噴霧消火設備との比較

甲1で学んだ水噴霧消火設備と泡消火設備は、どちらも駐車場に設置できる油火災対応の設備です。両者の技術基準を比較すると、設備の特性の違いが見えてきます。

項目 泡消火設備 水噴霧消火設備
消火原理 窒息(メイン)+冷却 冷却+窒息+乳化
放射量 6.5 L/min・㎡ 20 L/min・㎡
放射時間 10分 20分
水の使用量 少ない 多い
石油タンク 対応可(固定泡放出口) 不向き

注目すべきは放射量の違いです。水噴霧は20 L/min・㎡に対して泡は6.5 L/min・㎡。泡消火設備のほうが約3分の1の水量で済みます。

なぜかというと、水噴霧は水の冷却と乳化で消火するため大量の水が必要ですが、泡は油面を覆うことで酸素を遮断するため、少ない泡水溶液でも膨張して広い面積をカバーできるからです。

水の使用量が少ないということは、水源も小さくて済み、排水設備の負担も軽くなります。駐車場で泡消火設備が選ばれることが多いのは、このコストメリットも大きな理由です。

方式別の技術基準まとめ

技術基準の全体像
固定式
フォームヘッド:6.5 L/min・㎡
固定泡放出口:薬剤により放射率が異なる
高発泡:区画容積で計算
水源:10分間
移動式
泡消火栓からホース+ノズルで操作
歩行距離15m以内に設置
水源:15分間

まとめ問題

【問題1】泡消火設備の設置義務について、正しいものはどれか。

(1)施行令第13条は泡消火設備だけの設置基準を定めた条文である
(2)地下駐車場で床面積が100㎡のものには、水噴霧消火設備等の設置義務がある
(3)施行令第13条の設置対象には、水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン・粉末のいずれか1つを設置すればよい
(4)屋上の駐車場は面積に関わらず設置義務がない

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正解:(3)
施行令第13条は「水噴霧消火設備等」として5設備をまとめて規定しており、いずれか1つを設置すれば義務を満たせます。(1)は誤りで、5設備共通の条文です。(2)は誤りで、地下駐車場の基準は200㎡以上です。(4)は誤りで、屋上の駐車場でも300㎡以上なら設置義務があります。

【問題2】フォームヘッド方式の泡消火設備(駐車場)における泡水溶液の放射量として、正しいものはどれか。

(1)防護面積1㎡あたり 4 L/min 以上
(2)防護面積1㎡あたり 6.5 L/min 以上
(3)防護面積1㎡あたり 8 L/min 以上
(4)防護面積1㎡あたり 20 L/min 以上

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正解:(2)
フォームヘッド方式の放射量は、防護面積1㎡あたり6.5 L/min以上です。(1)の4 L/min・㎡は固定泡放出口方式(たん白泡等)の放射率です。(3)の8 L/min・㎡は固定泡放出口方式で合成界面活性剤泡を使う場合の放射率です。(4)の20 L/min・㎡は水噴霧消火設備の放射量で、泡消火設備とは異なります。

【問題3】固定泡放出口方式(液面上注入方式)で放射時間が最も長い泡消火薬剤はどれか。また、その理由として正しいものはどれか。

(1)合成界面活性剤泡 ── 高発泡で体積が大きいため時間がかかる
(2)水成膜泡 ── 水の膜を形成するのに時間がかかる
(3)たん白泡 ── 流動性が低く油面全体を覆うのに長い時間が必要だから
(4)フッ素たん白泡 ── 耐油性が最も高く、じっくり消火する必要があるから

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正解:(3)
たん白泡は耐熱性・耐油性が非常に高いですが、流動性が低い(ネバネバして広がりにくい)ため、油面全体を泡で覆うのに長い時間が必要です。放射時間は30分で4種類中最長です。(1)は誤りで、合成界面活性剤泡の放射時間は10分です。(2)は誤りで、水成膜泡は即効性が高く放射時間は10分と最短クラスです。(4)はフッ素たん白泡の放射時間は20分で、最長ではありません。

【問題4】泡消火設備の技術基準について、正しいものはどれか。

(1)固定式の水源は、最大防護区域の泡水溶液を15分間放射できる量が必要である
(2)移動式の水源は、最大使用個数分の泡水溶液を10分間放射できる量が必要である
(3)高発泡方式には、たん白泡消火薬剤を使用する
(4)移動式は固定式より水源の放射時間が長い

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正解:(4)
固定式の水源は10分間分、移動式の水源は15分間分です。移動式は人が操作するため起動が遅く、放射にもムラが出やすいので、長い放射時間を確保する必要があります。(1)は誤りで、固定式は10分間です。(2)は誤りで、移動式は15分間です。(3)は誤りで、高発泡方式に使用できるのは合成界面活性剤泡のみです。

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