甲種2類

泡消火設備の全体像と消火原理|膨張比・還元時間・設備構成をわかりやすく解説

結論から言います。

泡消火設備は、水に泡消火薬剤を混ぜて泡を作り、燃えている対象物を泡で覆って消火する設備です。甲種1類で学んだ水系消火設備の「水」に「泡」が加わった設備と考えるとわかりやすいです。

水だけでは消せない油火災に威力を発揮します。駐車場・航空機格納庫・石油タンクなど、可燃性液体を扱う場所に設置されます。

泡消火設備の3つのキーワード
泡の消火原理
窒息効果+冷却効果
油面を泡で覆って
酸素を遮断する
膨張比
泡がどれだけ
膨らむかの指標
低発泡〜高発泡
還元時間
泡が消えるまでの
時間=泡の耐久力
長いほど高品質

なぜ泡消火設備が必要なのか

消火の三要素と消火原理」で学んだように、消火には冷却・窒息・抑制(負触媒)・除去の4つの方法があります。

水は冷却効果に優れた消火剤ですが、油火災には使えません。なぜなら、水は油より重いため油の下に沈んでしまい、油面を冷やせないからです。さらに、高温の油に水をかけると水蒸気爆発を起こす危険もあります。

泡消火設備は、この弱点を泡で解決します。泡は水より軽く、油面の上に浮かんで薄い泡の層を作ります。この泡の層が油面を覆うことで:

  • 窒息効果 ── 油面と空気を遮断し、酸素の供給を止める
  • 冷却効果 ── 泡に含まれる水分が蒸発して熱を奪う

この2つの効果で油火災を確実に消火します。

水系設備との違い
甲1の水系消火設備は「水の冷却効果」がメインでした。泡消火設備は「泡の窒息効果」がメインです。冷却はあくまで補助的な効果です。この違いが、設備の構造や設置基準に大きく影響します。

泡の性質 ── 膨張比と還元時間

泡消火設備を理解するうえで、膨張比還元時間の2つは避けて通れません。試験でも頻出のキーワードです。

膨張比とは

膨張比は、泡水溶液がどれだけ膨らんで泡になるかを示す数値です。

膨張比の公式
膨張比 = 泡の体積 ÷ 泡水溶液の体積
例:泡水溶液1Lから10Lの泡ができたら → 膨張比10

膨張比によって泡は3つのタイプに分類されます。

分類 膨張比 特徴
低発泡 20未満 水分が多く重い泡。流動性が高い
高発泡 80以上1000未満 空気が多く軽い泡。空間を埋める

低発泡は水分を多く含むため重く、油面に密着して覆いかぶさるのが得意です。駐車場や石油タンクのように油面が露出している場所で使います。

高発泡は空気をたっぷり含んでフワフワした泡です。大量の泡で空間全体を埋めることができます。飛行機の格納庫のような広い空間の消火に向いています。

イメージで覚える
低発泡 → お風呂の泡(重くて油面に乗る)
高発泡 → バブルマシンの泡(軽くて空間を埋める)

還元時間(25%還元時間)とは

還元時間は、泡から水分が抜けて泡が消えるまでの時間を示す数値です。正確には「泡に含まれる水分の25%が液体に戻るまでの時間」を25%還元時間と呼びます。

還元時間のポイント
還元時間が長い = 泡が長持ち = 消火性能が高い

泡が早く消えてしまうと、油面が再び空気に触れて再着火してしまいます。だから還元時間が長い泡ほど優秀です。

この還元時間は泡消火薬剤の種類によって大きく異なります。次の記事で解説する薬剤の比較で、重要な判断基準になります。

泡消火設備の全体構成

泡消火設備は、甲1で学んだ水系消火設備に泡を作るための仕組みが加わった構成です。

泡消火設備の構成(水源→泡放出まで)
1
水源(水槽) ── 水系設備と同じ
2
加圧送水装置(ポンプ) ── 水系設備と同じ
3
泡消火薬剤貯蔵槽 ── 泡消火設備だけの構成要素
4
混合装置 ── 水と薬剤を混ぜる(泡水溶液を作る)
5
配管 ── 泡水溶液を送る配管
6
泡放出口(泡ヘッド・フォームヘッド等) ── 泡水溶液に空気を混ぜて泡を放出

オレンジ色のステップ(3・4・6)が泡消火設備だけの構成要素です。水系設備の「水源→ポンプ→配管→放水口」に、薬剤タンク・混合装置・泡放出口が追加された形です。

泡ができるまでの3ステップ

泡は次の3段階で作られます。

Step 1
水+薬剤
→ 泡水溶液
Step 2
泡水溶液+空気
→ 泡
Step 3
泡を放出
→ 油面を覆う

ポイントは空気を混ぜるタイミングです。配管の中を流れているのはまだ「泡水溶液」(水+薬剤の液体)であって、泡ではありません。泡放出口から出る直前に空気を巻き込んで、はじめて泡になります。

泡消火設備の種類

泡消火設備は、泡の放出方法によって大きく固定式移動式に分かれます。

固定式泡消火設備

建物に配管やヘッドをあらかじめ設置しておく方式です。火災を感知すると自動または手動で泡を放出します。

方式 特徴 主な設置場所
フォームヘッド方式 天井にヘッドを設置。SPヘッドに似た感覚で泡を散布 駐車場
フォームウォーター
スプリンクラー方式
閉鎖型ヘッドで泡水溶液を放出。SPと同じ感熱開放 駐車場
固定泡放出口方式 タンク上部に固定設置。泡をタンク内に注入 石油タンク
高発泡方式 高膨張泡発生装置で大量の泡を放出し空間を埋める 航空機格納庫
船倉

移動式泡消火設備

屋外消火栓のように、ホースを伸ばして泡を放射する方式です。泡消火栓から泡ノズルを取り出し、人が操作して消火します。

固定式に比べて設備が簡易ですが、操作には訓練が必要です。

水系消火設備(甲1)との比較

甲1で学んだ水系消火設備と泡消火設備を比較すると、違いと共通点が明確になります。

項目 水系消火設備(甲1) 泡消火設備(甲2)
消火剤 水+泡消火薬剤
主な消火原理 冷却 窒息(+冷却)
得意な火災 一般火災(A火災) 油火災(B火災)
追加構成要素 薬剤タンク・混合装置・泡放出口
共通する構成 水源・ポンプ・配管・送水口・非常電源

甲1の知識がそのまま土台になるので、追加で覚える内容は薬剤・混合装置・泡放出口の3つがメインです。

泡消火設備が設置される場所

泡消火設備は、油火災のリスクが高い場所に設置されます。詳しい設置基準は後の記事で解説しますが、代表的な場所を押さえておきましょう。

  • 駐車場 ── ガソリンやオイルを含む車両が密集する場所
  • 航空機格納庫 ── ジェット燃料を扱う広大な空間
  • 石油タンク(屋外タンク貯蔵所) ── 大量の可燃性液体を貯蔵
  • 危険物施設 ── 第4類危険物(引火性液体)を取り扱う施設
  • 指定可燃物を扱う施設 ── 合成樹脂類など
甲1との関係
水系消火設備の全体像」で「水だけでは油火災に対応できない」と触れました。泡消火設備は、まさにその弱点を補うために存在する設備です。甲1と甲2は水系の表裏一体と考えてください。

まとめ問題

記事の内容を理解できたか、4問のクイズで確認しましょう。

【問題1】泡消火設備の主な消火原理として、最も適切なものはどれか。

(1)冷却効果
(2)窒息効果
(3)抑制(負触媒)効果
(4)除去効果

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正解:(2)
泡消火設備は、泡で油面を覆って酸素を遮断する窒息効果が主な消火原理です。泡に含まれる水分による冷却効果もありますが、あくまで補助的です。水系消火設備(甲1)の「冷却メイン」との違いを押さえましょう。

【問題2】膨張比について、正しいものはどれか。

(1)膨張比とは、泡の体積を水源の体積で割った値である
(2)低発泡とは膨張比が80以上のものをいう
(3)高発泡の泡は水分が多く重いため、油面に密着しやすい
(4)低発泡とは膨張比が20未満のものをいう

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正解:(4)
低発泡は膨張比20未満、高発泡は膨張比80以上1000未満です。(1)は「泡水溶液の体積」で割るのが正しい。(2)は高発泡の説明。(3)は逆で、高発泡は空気が多く軽い泡です。

【問題3】泡消火設備の構成要素のうち、水系消火設備(甲1)にはない固有の構成要素の組み合わせとして正しいものはどれか。

(1)水源・加圧送水装置・配管
(2)泡消火薬剤貯蔵槽・混合装置・泡放出口
(3)水源・混合装置・送水口
(4)加圧送水装置・泡消火薬剤貯蔵槽・非常電源

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正解:(2)
泡消火設備に固有の構成要素は泡消火薬剤貯蔵槽・混合装置・泡放出口の3つです。水源・ポンプ・配管・送水口・非常電源は水系消火設備と共通する構成要素です。

【問題4】水だけでは油火災を消火できない理由として、最も適切なものはどれか。

(1)水は油より温度が低く、冷却効果が弱いから
(2)水は油に溶けないため、化学反応を起こせないから
(3)水は油より重く油の下に沈むため、油面を冷やせないから
(4)水は蒸発しやすく、油面に留まれないから

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正解:(3)
水(比重1.0)は油(比重0.7〜0.9程度)より重いため、水をかけても油の下に沈んでしまい、燃えている油面に到達できません。さらに、高温の油に水が触れると水蒸気爆発を起こす危険もあります。泡は油より軽いため、油面の上に浮かんで覆うことができるのです。

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