結論:スプリンクラーヘッドは「熱で自動開放する放水口」
スプリンクラーヘッドとは、天井面に取り付けられた小さな放水口です。火災の熱で感熱体(かんねつたい)が壊れると自動的に開放し、水を散水して消火します。
「スプリンクラー設備の全体像と方式」の記事では5つの方式を紹介しましたが、今回はその心臓部であるヘッドそのものに焦点を当てます。
ヘッドには種類がたくさんありますが、大きく分けると2つです。
試験では閉鎖型ヘッドが圧倒的に出題頻度が高いです。この記事では閉鎖型をメインに、感熱体のしくみ・標示温度・感度種別・取付方向まで詳しく解説します。
閉鎖型ヘッドのしくみ — 感熱体が「栓」の役割
閉鎖型ヘッドは、平常時は感熱体によって放水口がふさがれています。火災が発生すると、上昇した熱気で感熱体が壊れ、水が一気に噴き出します。
ポイントは、火元に近いヘッドだけが個別に開放すること。10個のヘッドが並んでいても、熱を受けた1〜2個だけが作動します。だから水損(みずによる被害)を最小限に抑えられるんですね。
感熱体の種類 — ヒュージブルリンクとグラスバルブ
感熱体には大きく2つのタイプがあります。
現在はグラスバルブ型が主流です。理由はシンプルで、ガラス球の中の液体の色を見るだけで作動温度がわかるからです。次の「標示温度」のセクションで詳しく説明しますね。
標示温度と色分け — ヘッドはどの温度で作動するか
標示温度とは、そのヘッドが作動(開放)する温度のことです。
当然ですが、部屋の温度がちょっと上がっただけでヘッドが開いたら大変ですよね。かといって、高すぎる温度に設定すると火災が広がってからやっと作動する――これでは意味がありません。
だから、設置場所の最高周囲温度に応じて適切な標示温度を選ぶことが重要です。
選び方の基本ルール
施行規則では、標示温度は取付場所の最高周囲温度に応じたものを使うことが定められています。
一般的な目安はこうです。
| 設置場所 | 最高周囲温度 | 標示温度 |
|---|---|---|
| 一般居室・廊下 | 39℃以下 | 72℃前後 |
| 厨房・ボイラー室付近 | 40〜64℃ | 96〜120℃ |
| 乾燥室等の高温環境 | 65℃以上 | 121℃以上 |
ざっくり言えば、「周囲温度より30℃程度高い標示温度」のヘッドを選びます。一般的なオフィスや住宅なら72℃のヘッドがほとんどです。
グラスバルブの色で温度がわかる
グラスバルブ型の大きなメリットは、ガラス球内の液体の色で標示温度がひと目でわかることです。
| 液体の色 | 標示温度 | 用途 |
|---|---|---|
| ● オレンジ | 57℃ | 住宅用等 |
| ● 赤 | 68℃ | 一般居室 |
| ● 黄 | 79℃ | やや高温の場所 |
| ● 緑 | 93℃ | 厨房付近等 |
| ● 青 | 141℃ | 高温環境 |
| ● 紫 | 182℃ | 特殊な高温場所 |
| ● 黒 | 227〜260℃ | 極高温環境 |
試験でよく出るのはオレンジ〜緑の範囲です。「赤=68℃=一般居室」は必ず覚えましょう。
試験対策ポイント
感度種別 — 標準型と高感度型(早期反応型)
ヘッドの「感度」とは、熱を受けてからどれだけ速く作動するかです。
感度の指標として使われるのがRTI(Response Time Index=感熱応答係数)です。この数値が小さいほど速く反応します。
| 種別 | RTI値 | 特徴 |
|---|---|---|
| 標準型 | 80超 | 一般的なヘッド |
| 高感度型(QR) | 50以下 | 速く反応する |
QRは「Quick Response(クイックレスポンス)」の略です。
高感度型ヘッドが必要な場所
高感度型ヘッドは、就寝施設など逃げ遅れのリスクが高い場所で使用が義務付けられています。
- 病院・診療所(入院施設あり)
- 社会福祉施設(特別養護老人ホーム等)
- ホテル・旅館
なぜ就寝施設なのか? ―― 寝ている人は火災に気づくのが遅れます。だからヘッドがより速く作動して、火が小さいうちに消す必要があるんです。
ヘッドの取付方向 — 下向き・上向き・側壁型
スプリンクラーヘッドは取り付ける方向によって3つに分かれます。
デフレクターの役割 — 水を散水パターンに変える
ヘッドから出た水は、そのままでは一直線に噴き出すだけです。これを広い範囲に均一に散水するために必要なのがデフレクター(散水板)です。
デフレクターは、ヘッドの先端に付いている平らな金属板です。ノズルから噴き出した水がデフレクターに当たり、放射状に飛び散ることで広い範囲をカバーします。
- 下向き型 — デフレクターが下にある。水は下方に放射状に散水される
- 上向き型 — デフレクターが上にある。水は上に噴き上がった後、デフレクターで下方に反射される
- 側壁型 — デフレクターの形状が特殊。壁から離れる方向に片側散水する
デフレクターの形状や角度によって散水パターン(散水の広がり方)が変わるため、ヘッドの種類ごとに設計が異なります。
フラッシュ型とコンシールド型 — 見た目の違い
ヘッドの取付方向とは別に、見た目(意匠)の分類もあります。
フラッシュ型
天井面とほぼ面一(つらいち)になるように設置するタイプです。ヘッドの出っ張りが少なく、天井がすっきり見えます。
オフィスビルやホテルなど、美観を重視する場所でよく使われます。
コンシールド型
ヘッド全体をカバープレート(化粧板)で隠してしまうタイプです。
カバープレートは感熱機能を持っており、火災時にはカバーが先に脱落し、その後にヘッド本体が作動します。つまり二段階で動くわけです。
- カバープレートの作動温度 → ヘッド本体の標示温度より低い温度(先に外れる必要があるため)
- 見た目は天井と一体化してほとんど目立たない
- ホテルの客室・高級オフィス等で採用
開放型ヘッド — 感熱体のないシンプル構造
最後に開放型ヘッドについても触れておきます。
開放型ヘッドには感熱体がありません。常に放水口が開いた状態です。では、どうやって放水を制御するのか?
答えは一斉開放弁です。「スプリンクラー設備の全体像と方式」の記事で解説した開放型スプリンクラーでは、火災感知器の信号で一斉開放弁が開き、配管に水が流れてすべてのヘッドから同時に放水します。
開放型ヘッドが使われる場所は、延焼が速い場所です。
- 舞台(劇場)
- 指定可燃物を大量に扱う倉庫
- 化学工場
火元だけでなく周囲も含めて一気に消火する必要がある場所で使われる、ということですね。
まとめ — スプリンクラーヘッドの全体像
理解度チェック! 練習問題
ここまでの内容を確認しましょう。
【問題1】閉鎖型スプリンクラーヘッドの感熱体として、現在最も多く使用されているものはどれか。
- バイメタル
- ヒュージブルリンク
- グラスバルブ
- 熱電対
【問題2】グラスバルブ型スプリンクラーヘッドの液体が赤色である場合、その標示温度として正しいものはどれか。
- 57℃
- 68℃
- 79℃
- 93℃
【問題3】高感度型(QR)スプリンクラーヘッドの使用が義務付けられている施設として、最も適切なものはどれか。
- 事務所ビル
- 駐車場
- 百貨店
- 病院(入院施設あり)
【問題4】スプリンクラーヘッドのデフレクターの役割として、正しいものはどれか。
- 火災の熱を感知する
- 配管内の水圧を調整する
- 水を放射状に散水する
- 誤作動を防止する
【問題5】コンシールド型スプリンクラーヘッドについて、正しい記述はどれか。
- 感熱体を持たない開放型ヘッドの一種である
- カバープレートの作動温度はヘッド本体の標示温度より高い
- 火災時にカバープレートが先に脱落し、その後ヘッド本体が作動する
- 側壁に取り付ける専用のヘッドである