結論:消防用ポンプの主役は「渦巻ポンプ」
結論から言います。
消防用設備で使われるポンプは、ほぼすべて渦巻ポンプ(うずまきポンプ)です。羽根車を回転させて遠心力で水を送り出す方式で、大量の水を安定して供給できるのが特徴です。
「加圧送水装置と附属装置」の記事で渦巻ポンプの基本的なしくみと全揚程の概要を紹介しましたが、今回はさらに深く、ポンプの分類・構造の詳細・性能曲線・トラブル現象まで解説します。
特にキャビテーションとウォーターハンマーは試験の頻出テーマです。
ポンプの分類 — ターボ型と容積型
ポンプは大きく2つの系統に分類されます。
消防用はターボ型の渦巻ポンプ一択と考えて問題ありません。大量の水を連続的に安定して送れること、構造がシンプルでメンテナンスしやすいことが理由です。
渦巻ポンプの構造を詳しく見る
渦巻ポンプの主要部品を確認しましょう。
水の流れ
渦巻ポンプ内部での水の動きを追ってみましょう。
ケーシングが「渦巻き」状に広がっているのがポイント。流路が徐々に広くなることで、水の速度が落ちる代わりに圧力が上がる(ベルヌーイの定理)。これが「渦巻ポンプ」の名前の由来です。
ポンプの性能 — 吐出量・全揚程・性能曲線
2つの基本性能
ポンプの性能を表す最も重要な指標は2つです。
| 指標 | 記号 | 意味 |
|---|---|---|
| 吐出量 | Q | 1分間に送り出す水の量(L/min) |
| 全揚程 | H | 水を押し上げられる高さ(m) |
吐出量Qと全揚程Hにはトレードオフの関係があります。たくさんの水を出そう(Q↑)とすると、押し上げられる高さ(H)は下がります。逆に、高い所まで送ろう(H↑)とすると、水の量(Q)は減ります。
性能曲線(Q-H曲線)
このQとHの関係をグラフにしたものが性能曲線(Q-H曲線)です。
性能曲線は右下がりの曲線です。ポンプを選定するときは、必要な吐出量Qと全揚程Hの交点が、性能曲線の範囲内に収まるようにします。
締切運転と締切揚程
締切運転とは、吐出側のバルブを完全に閉じた状態(Q=0)でポンプを運転することです。このときの揚程を締切揚程といいます。
締切運転では水が流れないため、ポンプ内の水が摩擦熱で過熱します。長時間の締切運転はポンプの故障につながるため、避けなければなりません。
キャビテーション — ポンプを壊す「泡」
キャビテーション(空洞現象)は、試験で最も出題されるポンプのトラブルです。
キャビテーションとは?
ポンプの吸込側で水の圧力が下がりすぎると、水が局所的に沸騰して気泡(空洞)が発生します。この気泡が圧力の高い場所に移動すると一瞬で潰れ、その衝撃波が羽根車やケーシングを傷つけます。これがキャビテーションです。
キャビテーションの症状
- 異常な振動・騒音 — 気泡の崩壊で「バリバリ」「ガリガリ」という音が出る
- 吐出量・揚程の低下 — ポンプの性能が落ちる
- 羽根車の壊食(エロージョン) — 衝撃波で金属表面が削られる
キャビテーションの防止策
キャビテーションを防ぐには、吸込側の圧力を十分に高く保つことが基本です。
- ポンプの設置位置を下げる — 水源との高低差を小さくして吸込圧力を確保
- 吸込管を太く・短くする — 管の摩擦損失を減らして圧力低下を防ぐ
- 吸込管の曲がりを少なくする — 曲がりによる圧力損失を減らす
- 回転速度を下げすぎない — 適正な回転数で運転する
試験でのポイント
ウォーターハンマー(水撃現象)— 配管を壊す「衝撃波」
ウォーターハンマー(水撃現象)は、配管内で水の流れが急に止まったときに発生する異常な圧力上昇です。
ウォーターハンマーとは?
高速で流れている水を急にバルブで止めると、水の運動エネルギーが行き場を失い、圧力の衝撃波が配管内を伝わります。「ドン!」「ガン!」という大きな音がして、配管やバルブが損傷することがあります。
ハンマー(かなづち)で叩いたような衝撃が配管に加わるので、「ウォーターハンマー」と呼ばれます。
発生する場面
- バルブの急閉 — 仕切弁やボールバルブを急に閉じたとき
- ポンプの急停止 — 停電などでポンプが突然止まったとき
防止策
- バルブをゆっくり閉める — 急閉を避ける
- 逆止弁の設置 — 水の逆流を防ぐ
- エアチャンバー(空気室)の設置 — 圧力変動を空気で吸収する
- フライホイールの設置 — ポンプの急停止を防ぐ(慣性で徐々に減速)
サージング — ポンプの「息つき」
サージングとは、ポンプの吐出量と揚程が周期的に変動する現象です。吐出圧力が上がったり下がったりを繰り返し、放水が安定しません。
原因は、ポンプの性能曲線と配管の抵抗曲線が不安定な交差をする運転点で発生します。配管系の設計やポンプの選定が適切でないときに起きやすい現象です。
3つのトラブル現象を比較
| 現象 | 発生場所 | 原因 |
|---|---|---|
| キャビテーション | ポンプ吸込側 | 圧力低下で気泡発生 |
| ウォーターハンマー | 配管内 | 急閉・急停止で衝撃波 |
| サージング | ポンプ全体 | 不安定な運転点 |
ポンプに関する重要公式
最後に、試験に出る計算の基礎を押さえておきましょう。
全揚程の計算(復習)
「加圧送水装置と附属装置」の記事でも解説しましたが、改めて公式を整理します。
h2:摩擦損失水頭(配管の抵抗による損失)
h3:放水圧力換算水頭(0.1MPa ≒ 10m)
ポンプの軸動力
H:全揚程(m)
ρ:水の密度(1,000 kg/m³)
g:重力加速度(9.8 m/s²)
η:ポンプ効率(0〜1)
ポンプ効率ηは必ず1未満なので、軸動力は水動力(Q×H×ρ×g)より大きくなります。効率が良いポンプほどηが1に近く、少ない動力で多くの水を送れます。
理解度チェック! 練習問題
ここまでの内容を確認しましょう。
【問題1】消防用設備の加圧送水装置に主に使用されるポンプの種類として、正しいものはどれか。
- 往復ポンプ
- 歯車ポンプ
- 渦巻ポンプ
- 軸流ポンプ
【問題2】キャビテーションについて、正しい記述はどれか。
- ポンプの吐出側で圧力が上昇しすぎて発生する
- ポンプの吸込側で圧力が低下し、水が局所的に沸騰して気泡が発生する
- 配管内でバルブを急閉したときに発生する衝撃波である
- ポンプの吐出量と揚程が周期的に変動する現象である
【問題3】キャビテーションの防止策として、適切でないものはどれか。
- ポンプの設置位置を下げて水源との高低差を小さくする
- 吸込管を太く短くして摩擦損失を減らす
- 吐出側のバルブを全開にして吐出圧力を下げる
- 吸込管の曲がりを少なくして圧力損失を減らす
【問題4】ウォーターハンマーの防止策として、正しいものはどれか。
- ポンプの吸込管を太くする
- バルブをゆっくり閉める
- ポンプの回転速度を上げる
- 配管の口径を小さくする
【問題5】渦巻ポンプの性能曲線(Q-H曲線)について、正しい記述はどれか。
- 吐出量Qが増えると全揚程Hも増加する
- 吐出量Qが増えると全揚程Hは低下する
- 吐出量Qと全揚程Hは常に一定である
- 吐出量Qが0のとき全揚程Hも0になる