全類共通

消防法の基本、消防用設備等の設置及び維持について

学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない。

消防法第17条1項を “かみ砕いて一枚に” まとめると

覚える順番初心者向けのキーワード内容(ざっくり要約)
だれが?関係者指定された建物(防火対象物)の 所有者・管理者・占有者
どの建物?指定防火対象物学校・病院・工場・百貨店・地下街など、政令(施行令別表1)に並ぶ用途
何を?消防用設備等消火設備・警報設備・避難設備、消防用水、消火活動上必要な施設
どうする?設置と維持政令で定めた技術基準のとおりに取り付け、正常に動くよう保守する
ねらい性能確保火災時に 「消す・知らせる・逃がす」機能 が十分働くこと

一定規模以上の建物を持つ人は、法律で決められた性能を満たす消防設備を取り付け、常に動くように保守しなさい――これが第17条1項の命令です。

どんな建物が “指定防火対象物” か

  • 施行令別表1 にリストアップされた用途が対象
    • 例:学校・病院・映画館・百貨店・旅館・事務所・地下街・複合ビル など
  • 戸建て住宅や小規模共同住宅は原則ここに載っていない
    • 一般住宅は 住宅用火災警報器(消防法9条の2)で別枠管理

消防17条1項で定める防火対象物表

※赤色で塗られてるのは特定防火対象物

防火対象物の用途(条文原文+〔補足〕)
(一)劇場、映画館、演芸場又は観覧場〔ライブハウス等を含む常設観覧施設〕
公会堂又は集会場〔ホール・貸会議室など多目的集会空間〕
(二)キャバレー、カフェー、ナイトクラブその他これらに類するもの
遊技場又はダンスホール〔パチンコ店・ゲームセンター等〕
性風俗関連特殊営業を営む店舗(※除外条件あり)
カラオケボックス等個室遊興店舗〔ブース式ネットカフェ含む〕
(三)待合、料理店その他これに類するもの〔料亭・お座敷接待等〕
飲食店〔レストラン・居酒屋・ファストフード等〕
(四)百貨店、マーケット、物品販売店舗又は展示場〔ショッピングモール等〕
(五)旅館、ホテル、宿泊所その他これに類するもの〔民宿・カプセル含む〕
寄宿舎、下宿又は共同住宅〔寮・サービス付き高齢者住宅等〕
(六)病院・入院診療所・助産所〔入院患者用病床を有するもの〕
特養・介護老人保健施設・障害者入所施設等
老人デイサービス、保育所、認定こども園等
幼稚園又は特別支援学校
(七)小・中・高・大学、専修・各種学校等
(八)図書館、博物館、美術館その他これらに類するもの
(九)蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類する公衆浴場〔サウナ等〕
イ以外の公衆浴場〔一般浴槽主体の銭湯等〕
(十)駅・空港・港の旅客ターミナル建築物
(十一)神社、寺院、教会その他これらに類するもの
(十二)工場又は作業場
映画スタジオ又はテレビスタジオ
(十三)自動車車庫又は駐車場
航空機格納庫
(十四)倉庫
(十五)前各項に該当しない事業場〔オフィス・研究所等〕
(十六)特定用途を含む複合用途防火対象物〔商業+ホテル等〕
イ以外の複合用途防火対象物〔住宅+事務所等〕
(十六の二)地下街
(十六の三)準地下街(地下道連続地階)
(十七)重要文化財・史跡等の建造物
(十八)延長50m以上のアーケード
(十九)市町村長指定の山林
(二十)総務省令で定める舟車

「備考4カ条」“番号の付け方”を決める裏ルール

別表第一には4つの備考がある。それが以下の通りだ(条文→解説の順になってます)

1.二以上の用途に供される防火対象物で、第1条の2第2項後段の規定の適用により複合用途防火対象物以外の防火対象物となるものの主たる用途が(一)項から(十五)項までに掲げる防火対象物の用途であるときは、当該防火対象物は当該各項に掲げる防火対象物とする。

複合ビル扱いにならなかった 建物が2用途以上で使われている場合は、いちばん面積の大きい(=主たる)用途番号だけで判定する。「劇場+事務所」ビルなら劇場面積が多い限り (一) 劇場 に一本化。

2.(一)項から(十六)項までに掲げる用途に供される建築物が(十六の二)項に掲げる防火対象物内に存するときは、これらの建築物は同項に掲げる防火対象物の部分とみなす。

地下街(⑯-2)の中に店舗や事務所が入っていると、その店は 全部まとめて〝地下街〟番号だけで管理する。地下モール内のカフェや書店も個別番号は付かず ⑯-2 地下街 の一部。

3.(一)項から(十六)項までに掲げる用途に供される建築物又はその部分が(十六の三)項に掲げる防火対象物の部分に該当するものであるときは、これらの建築物又はその部分は同項に掲げる防火対象物の部分であるほか、(一)項から(十六)項までに掲げる防火対象物又はその部分でもあるものとみなす。

準地下街(⑯-3)に収まる店舗やシネコンは、⑯-3 と元の番号の両方を背負う。“半地下の映画館”なら ⑯-3 + (一)イ 劇場。地下特有の煙対策と業態ごとの避難基準の「ダブル適用」。

4.(一)項から(十六)項までに掲げる用途に供される建築物その他の工作物又はその部分が(十七)項に掲げる防火対象物に該当するものであるときは、これらの建築物その他の工作物又はその部分は同項に掲げる防火対象物であるほか、(一)項から(十六)項までに掲げる防火対象物又はその部分でもあるものとみなす。

建物やその一部が重要文化財・史跡など(⑰)に指定された場合は、⑰ 文化財番号と元の番号を両方持つ。“登録文化財のホテル”なら ⑰ + (五)イ 旅館・ホテル。文化財保護基準+通常防火基準を両方適用するため。

消防法施行令 別表第1の一番下に並んでいる ①〜④の備考は、
《2つ以上のカテゴリーにかぶったとき どの番号で扱う?》 を整理するための“交通整理ルール”です。
難しそうに見えますが、実は 「主役を決める」or「両方つける」 の2パターンしかありません。

“番号がダブったらどうする?”を 3 つの例でサクッと理解

消防法施行令 別表 第1 の備考4カ条は、たった2 通りのさばき方だけを決めています。

さばき方いつそうなる?具体例
① 1 つにしぼる(どれか1番号だけ)- 2 用途あるけど 主役がハッキリ- 地下街の中に入っている例A 書店+事務所ビル 床面積7割が売り場 → ④ 物品販売だけ

例B 地下モール内のレストラン 店の種類は飲食(③ロ)だけど 地下街にいるので ⑯-2 地下街だけ
② 2 つ並べる(両方付ける)- 準地下街(半地下)にある- 文化財に指定された例C 半地下の映画館 → ⑯-3 準地下街 + (一)イ 劇場例D 重要文化財のホテル棟 → ⑰ 文化財 + (五)イ 旅館・ホテル

まとめスイッチ

  1. 主役だけ? → 面積が一番 or 地下街の中
  2. 両方付け? → 準地下街 or 文化財

このスイッチだけ覚えれば、備考条文を丸暗記しなくても番号の付け方で迷いません。

技術基準って何?

  • 施行令・省令・告示 に細かな数値や構造が書かれている
    • 例)スプリンクラーの放水量、感知器の設置間隔、非常電源の容量 など
  • 建築確認や消防検査では この数値をクリアしているか をチェックされる

つまずきやすいポイント

  1. 防火対象物=すべての建物 ではない
    • “学校など” は例示、最終的には 施行令別表1 が決定版
  2. 設置だけでなく維持も義務
    • 年2回の点検・年1回の報告(17条の3の3)がセットで求められる
  3. 住宅は別条文
    • 「消防用設備等」は不要でも、住宅用警報器の設置義務はある
よく出る問い方コツ
「防火対象物に含まれないものはどれか」戸建て住宅 を選ばせる問題が定番
「設置義務がない設備を選べ」建物用途と延べ面積を見て、施行令別表を照合
「維持義務の責任主体はだれか」所有者・管理者・占有者=関係者 の3点セットを即答
  • 第17条1項=「指定された建物は性能基準どおり消防設備を設置・維持しなさい」という条文
  • 対象建物は 施行令別表1 がリスト、住宅は別ルート
  • 義務を負うのは 関係者(所有・管理・占有) の3役

この枠組みを頭に入れておけば、細かい数値や設備名は後で肉付けしていくだけでスムーズに覚えられます。

施行令別表第1を理解するための問題集

ステム(問題文)
1ビジネスホテル(宿泊特化)はどの番号?(三)ロ(四)(五)イ(十五)
2データセンター専用ビルは?(四)(十二)イ(十五)(十)
3地下モール内の書店は?(四)(十六の二)(十六の二)(三)ロ
4地下道と直結した半地下の映画館は?(十六の二)(一)イ(十六の三)(十)
5旅客フェリーターミナルビルは?(十六)ロ(十)(十三)イ(十八)
6重要文化財に指定された寺院本堂に必ず付く番号は?(十一)(十七)(一)ロ(八)
7性風俗関連特殊営業店(ストリップ劇場)は?(一)イ(二)ロ(二)ハ(三)イ
8サウナ付きスーパー銭湯は?(九)ロ(九)イ(二)ロ(四)
9延長 70 m の屋根付き商店街は?(四)(十六)ロ(十八)(十六の二)
10常設客席 2000 の屋外スタンドは?(一)ロ(一)イ(四)(十六)ロ
11ボウリング場が該当する番号は?(二)イ(二)ロ(二)ロ(三)ロ
12カプセルホテルは?(五)ロ(四)(五)イ(一)イ
13大学図書館単独棟は?(八)(七)(八)(十五)
14立体機械式駐車場は?(十三)イ(十四)(十二)イ(十五)
15病院棟 70 %+事務所棟 30 %(複合用途判定外)→番号は?(四)(六)イ(十六)イ(十六)ロ
16地下街番号“のみ”が残るケースは?地下街外の店半地下の店地下街上階地下街内の店
17準地下街の飲食店に付く番号の組合せは?⑯-3のみ③ロのみ⑯-3+③ロ⑯-2+③ロ
18終日暗いカフェバー(接待あり)は?(二)イ(三)ロ(五)ロ(九)イ
19小学校の体育館は?(七)(一)ロ(八)(十五)
20自動車整備工場は?(十二)イ(十三)イ(十二)イ(四)
21寄宿舎 40 %+ホテル 60 %(複合用途外)は?(五)ロ(五)イ(十六)イ(十六)ロ
22市長指定山林は?(十七)(十九)(十六)ロ(二十)
23駅ビル内(地上)の商店街店舗番号は?(四)(四)(十)(三)ロ
24上記 23 の店が地下階に移転し地下街構内となったら?(四)(三)ロ(十六の三)(十六の二)
25重要文化財のレストラン(木造)は?(三)ロ(十七+三ロ)(四)(八)
26飛行機格納庫は?(十三)イ(十三)ロ(十二)イ(十)
27半地下ネットカフェ(個室型)は?(二)ニ(十六の三+二ニ)(十六の二)(三)ロ
28デパ地下食品売場は?(三)ロ(四)(十六の二)(十六)イ
291フロアを全て使うオフィスビルは?(十五)(十五)(十六)ロ(八)
30アーケード火災時に優先して確保すべき機能は?誘導灯のみ排煙設備なし防煙区画・排煙・誘導灯文化財保護策

別表第 1 ―〈用途区分〉を攻略する“過去問風”4択トレーニング30

使い方
1⃣ 30 問を 20 分で解く → 2⃣ 後ろの解答で自己採点 → 3⃣ 間違えた問題は「なぜその番号になるか」を備考ルールと照合して復習。
(合格ライン:24/30 問=8割)


問 題(①〜④の中から 1 つ選択)

ステム(問題文)
1ビジネスホテル(宿泊特化)はどの番号?(三)ロ(四)(五)イ(十五)
2データセンター専用ビルは?(四)(十二)イ(十五)(十)
3地下モール内の書店は?(四)(十六の二)(十六の二)(三)ロ
4地下道と直結した半地下の映画館は?(十六の二)(一)イ(十六の三)(十)
5旅客フェリーターミナルビルは?(十六)ロ(十)(十三)イ(十八)
6重要文化財に指定された寺院本堂に必ず付く番号は?(十一)(十七)(一)ロ(八)
7性風俗関連特殊営業店(ストリップ劇場)は?(一)イ(二)ロ(二)ハ(三)イ
8サウナ付きスーパー銭湯は?(九)ロ(九)イ(二)ロ(四)
9延長 70 m の屋根付き商店街は?(四)(十六)ロ(十八)(十六の二)
10常設客席 2000 の屋外スタンドは?(一)ロ(一)イ(四)(十六)ロ
11ボウリング場が該当する番号は?(二)イ(二)ロ(二)ロ(三)ロ
12カプセルホテルは?(五)ロ(四)(五)イ(一)イ
13大学図書館単独棟は?(八)(七)(八)(十五)
14立体機械式駐車場は?(十三)イ(十四)(十二)イ(十五)
15病院棟 70 %+事務所棟 30 %(複合用途判定外)→番号は?(四)(六)イ(十六)イ(十六)ロ
16地下街番号“のみ”が残るケースは?地下街外の店半地下の店地下街上階地下街内の店
17準地下街の飲食店に付く番号の組合せは?⑯-3のみ③ロのみ⑯-3+③ロ⑯-2+③ロ
18終日暗いカフェバー(接待あり)は?(二)イ(三)ロ(五)ロ(九)イ
19小学校の体育館は?(七)(一)ロ(八)(十五)
20自動車整備工場は?(十二)イ(十三)イ(十二)イ(四)
21寄宿舎 40 %+ホテル 60 %(複合用途外)は?(五)ロ(五)イ(十六)イ(十六)ロ
22市長指定山林は?(十七)(十九)(十六)ロ(二十)
23駅ビル内(地上)の商店街店舗番号は?(四)(四)(十)(三)ロ
24上記 23 の店が地下階に移転し地下街構内となったら?(四)(三)ロ(十六の三)(十六の二)
25重要文化財のレストラン(木造)は?(三)ロ(十七+三ロ)(四)(八)
26飛行機格納庫は?(十三)イ(十三)ロ(十二)イ(十)
27半地下ネットカフェ(個室型)は?(二)ニ(十六の三+二ニ)(十六の二)(三)ロ
28デパ地下食品売場は?(三)ロ(四)(十六の二)(十六)イ
291フロアを全て使うオフィスビルは?(十五)(十五)(十六)ロ(八)
30アーケード火災時に優先して確保すべき機能は?誘導灯のみ排煙設備なし防煙区画・排煙・誘導灯文化財保護策

解 答

11121
21222
31323
41424
51525
61626
71727
81828
91929
102030

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