主に重要と思われる条文と条文の中身をわかりやすくイメージできる説明の順で解説をしていきいます。
防火対象物 消防法2条2項
防火対象物とは、山林又は舟車(しゅうしゃ)、船きよ若しくはふ頭に繋留(けいりゅう)された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属する物をいう。
『防火対象物』とは、火災が起きる可能性があり、
消防隊が消火活動や予防管理をする必要がある場所やもののことです。
分類 | 具体的なイメージ | 理由 |
---|---|---|
山林(さんりん) | 森、林、山の中の木がたくさん生えているところ | 山火事が起こると危険 |
車両(しゃりょう) | 車、電車、バスなどの乗り物 | 火災が起きると人が危険にさらされる |
船舶(せんぱく) | 船やボート(ただし動いているものは除く)、停泊している船 | 火災が起きたときに消火が難しい |
建築物(けんちくぶつ) | 建物(家、ビル、学校、デパート、ホテルなど) | 人が住んだり、たくさんの人が集まる |
工作物(こうさくぶつ) | 橋やトンネル、看板や電柱など人が作った建築物以外の構造物 | 火災が起きれば社会に影響がある |
「船舶」には注意点がある?
「船舶」は、次の場合に『防火対象物』になります。
- 係留(けいりゅう)された船舶(港にロープなどで繋がれて停泊中の船)
- 陸上に引き上げられて保管されている船舶
逆に、海や川を動いている船(航行中の船) は対象にはなりません。
「これらに属するもの」とは?
『これらに属するもの』とは、建物や船舶などに関連して置かれている物や設備のことを言います。
例えば、
- 建物の中にある机や家具、機械など。
- 工場にある設備や機械、倉庫に保管されている荷物や材料など。
つまり、建物や施設と一緒に使われていて、
火災が起きたらそれが原因になったり、燃えると被害を大きくするものです。
どうして『防火対象物』という区分が必要なの?
- 消防隊は、火災を予防したり、もし火事が起きたらすぐ消せるように、『どこを注意して見張るべきか』『消火設備をどこに整備すべきか』を決めています。
- そのため、あらかじめ『ここは火事が起きると困る、気を付けるべき』という場所を『防火対象物』として指定し、特に管理しています。
消防対象物 消防法2条3項
消防対象物とは、山林又は舟車(しゅうしゃ)、船きよ若しくはふ頭に繋留(けいりゅう)された船舶、建築物その他の工作物又は物件をいう。
消防対象物とは消防隊が、火災を予防したり、実際に火災が起きたときに消火活動を行ったりする対象となるすべてのものを言います。
具体例 | 理由やイメージ |
---|---|
🌲 山林 | 山火事が起きる可能性がある |
🏠 建築物(家、ビル、学校、店舗) | 人がいて危険、火災が広がりやすい |
🌉 橋・トンネルなどの工作物 | 火災で交通や生活に支障が出る |
🚢 停泊中の船舶 | 火災が起きると消火が難しい |
🚗 車や電車などの乗り物 | 人が乗っていることが多く、危険性が高い |
📦 荷物や商品など | 燃えると周囲に被害が広がる |
消防対象物と防火対象物の違い
- 消防対象物
→ 消防隊が火災を消したり、予防活動を行う対象全て(めちゃくちゃ広い!) - 防火対象物
→ 消防対象物の中でも『火事が特にヤバい!絶対に消防設備が必要!』と法律で指定された特別な場所や建物(狭くて厳しい!)
つまり『防火対象物』は『消防対象物』の中でも、特に『危険度MAX!』ということですね!
関係者 消防法第2条4項
関係者とは、防火対象物又は消防対象物の所有者、管理者又は占有者をいう。
「関係者」とは、『防火対象物または消防対象物の所有者・管理者・占有者』のことを言います。
簡単に言うと、『その建物や場所について責任を持っている人たち』という意味です。
具体的には、次のような人が含まれます。
所有者(建物や場所を持っている人)
- 一戸建ての家を買った人(家の所有者)
- マンションやビルを建てて、所有している人や会社(オーナー)
イメージ:「ここの建物や場所は自分が買った!」という人。
管理者(建物や場所を管理してる人)
- 実際に建物や施設の管理・メンテナンス・安全を担当する責任者や管理会社。
- 所有者ではないが、持ち主から管理を任されている人や会社。
- マンションの管理人や管理会社
- ビルやデパートを管理している施設管理会社や担当者
- 学校でいう校長先生(学校の安全を管理している)
イメージ:「ここは自分が安全に管理しています!」という人。
占有者(建物や場所を実際に使ってる人)
- その場所を実際に利用している人や借りて使っている人。
- 所有者や管理者ではないが、日々そこで活動したり営業している人。
- テナントビルに入っているお店の経営者
- 借りているマンションやアパートの住人
- 工場や倉庫を借りて使っている会社
イメージ:「家賃を払うなどして実際にここを使ってます!」という人。
消防法上は、これらの人たちに火災予防や消防設備の設置などの義務が課されます。つまり、「関係者」は『その場所を守る責任がある人』という意味になります。
関係のある場所 消防法第2条5項
関係のある場所とは、防火対象物又は消防対象物のある場所をいう。
関係のある場所とは火災の危険がある建物や物、場所が存在する、その現場そのもののこと。
具体的なイメージで説明すると
例えば、次のような場所が『関係のある場所』にあたります。
- 家やマンションがある『住所地』そのもの
(その家やマンションが建っている土地や敷地) - スーパーやデパートが建っている敷地、駐車場を含む場所全体
- 停泊中の船が繋がれている港の一角(係留場所)
- 山火事の危険がある山林のエリアそのもの
- 倉庫や工場がある敷地全体、またその工場や倉庫が置かれた土地
つまり、「防火対象物や消防対象物が存在している、その土地や空間そのもの」を指しています。
なぜこんな言葉が必要か?
消防法は、「火災予防」や「火災の際の消火活動」を目的とした法律です。
- 火事が起きそうな場所や物、火事になった時に危険な場所について、
消防隊がすぐに対応できるよう、明確に範囲を決めておく必要があります。 - 「関係のある場所」として場所そのものを明確にすることで、
消防隊が素早く活動できたり、防火や消火のための責任範囲が明確になります。
舟車(しゅうしゃ) 消防法第2条6項
船舶安全法第二条第一項の規定を適用しない船舶、端舟、はしけ、被曳船その他の舟及び車両をいう。
※読み方
端舟(たんしゅう)
被曳船(ひえいせん)
船舶安全法第二条第一項の規定を適用しない船舶とは、「船舶安全法のルールが適用されない、小さな船や動力がない船などのこと」 を言います。
船舶安全法という法律は、主に安全のために大きな船や人を乗せる船が必ず守らなければならないルールです。
しかし、小さな船や動力がない船は、この法律のルールが細かすぎて当てはまらないため、除外されています。
具体的には以下のような船です。
名前(読み方) | イメージ | 説明 |
---|---|---|
端舟(たんしゅう) | 小舟や手漕ぎボート、釣り用の小さな船 | エンジンがない、またはとても小さい船 |
はしけ | 貨物を運ぶための平たい船 | エンジンがないか、自分の力で航行せず、岸に係留されているもの |
被曳船(ひえいせん) | 引っ張られて動く船(自分のエンジンで進まない船) | 別の船にロープなどで引かれて移動する船 |
その他の舟(ふね)や車両 | 手漕ぎの舟、エンジンのない小さな舟、車両(自動車、バスなど) | 水の上ではなく陸地で動く乗り物も含む |
なぜ適用されないのか?
これらの船や舟はとても小さくて、自分で遠くまで動かないため、大きな船のための法律(船舶安全法)で厳しいルールを課す必要がないのです。
- 手漕ぎのボートや小さい船には細かい安全基準が不要。
- 引っ張られる船(被曳船)は動力を持たず、自力では遠くまで行かないため、除外されている。
危険物 消防法第2条7項
危険物とは、別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。
「危険物」とは、消防法で定められた『火災の危険性が高い物品』のことです。
消防法には、「別表第1」という一覧表があります。
この表には、
- 品名(危険物の具体的な名前)
- 区分(危険物のグループ分け)
- 性質(どのような危険性があるか)
が書かれています。
つまり、
『別表第1に名前が書いてあり、その表にある区分ごとに決められた危険な性質を持つもの』
が消防法上の「危険物」ということになります。
※以下は簡易的な別表第1です。
(実際の法律には、もっとたくさんの物品が記載されています。)
区分 | 品名(例) | 性質(危険性) |
---|---|---|
第1類 | 塩素酸塩類 | 酸化性固体(酸素を出して他の物を燃えやすくする) |
第2類 | 硫化りん | 可燃性固体(火が付きやすい固体) |
第3類 | ナトリウム | 自然発火性物質(空気や水に触れるだけで発火する) |
第4類 | ガソリン | 引火性液体(火がつきやすい液体) |
第5類 | ニトログリセリン | 自己反応性物質(衝撃や熱で爆発しやすい) |
第6類 | 過酸化水素(濃度が高いもの) | 酸化性液体(強い酸化力がある液体) |
消防用設備等 消防法第17条1項
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない。
条文のキーワード | かみ砕いた意味 |
---|---|
対象となる建物 | 学校・病院・工場・オフィス・映画館・百貨店・旅館・飲食店・地下街・複合用途ビルなど、人が多い・火が出やすい・避難が難しい と法律で指定された建物 |
関係者 | その建物を 所有 している人、管理 している人、借りて使っている 人(=責任を負う立場の人) |
消防用設備等 | 消火器、スプリンクラー、自動火災報知設備、非常ベル、誘導灯、屋内・屋外消火栓、非常用照明、消防用水槽など、消防が消火・避難に使うすべての設備や水・施設 |
性能 | 「火を消す」「安全に逃げられる」など、実際に役立つ能力 のこと |
政令で定める技術上の基準 | 設置場所・台数・能力・点検方法などを細かく決めたルール(消防法施行令・省令・告示など) |
指定された大きな建物を持つ人は、決められたルールに従い、消火や避難に十分役立つ消防設備をきちんと設置し壊れないように維持しなければならないということを言っています。
もっとイメージしやすく(4ステップで理解)
- 「どんな建物?」
人が集まりやすく、火事になると大きな被害が出る場所。
例:病院で火災 → 逃げ遅れのリスク大。 - 「誰が責任者?」
ビルオーナー、学校法人、テナント企業など、その建物を使う・管理する立場の全員。 - 「何をしろと言っている?」
- 設置 … 消火器・スプリンクラー・非常ベル・誘導灯などをルールどおりに置く。
- 維持 … 点検・交換・訓練などでいつでも使える状態を保つ。
- 「どれくらいの性能?」
法令で決めた基準(例:スプリンクラーは〇〇㎡ごとに1ヘッド、非常ベルは聞こえる範囲を確保…)を満たし、「実際に火が出ても人命を守れる」レベル。
要するに
- 対象建物が大きく・重要であるほど、設置義務は厳しくなる。
- 設備は置くだけではダメ。 壊れていたら法律違反。
- 守らないと… ⇒ 行政指導・改善命令・罰則(最悪、使用禁止)もあり得る。
この条文は「命を守る設備はルールに沿って設置・維持するのが当たり前」という、消防法の中核を示しています。
特定防火対象物 消防法第17条1項&17条の2の5(2項4号)
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない。
特定防火対象物とはひとことでいうと「いつも人がたくさん集まって、もし火が出たら逃げるのが大変──だから消防設備を特に厚くしなさいと法律で指定された建物や施設」です。
代表例 | なぜ“特定”なの? |
---|---|
劇場・映画館 | 暗くて客席が密集、煙に気づきにくい |
病院・老人ホーム | 自力で動けない人が多い |
百貨店・スーパー | フロアが広く混雑しやすい |
旅館・ホテル | 就寝中だと避難開始が遅れる |
飲食店・カフェ | 火を使うので出火リスクが高い |
地下街 | 出口が限られ、煙がたまりやすい |
複合用途ビル(商業+宿泊など) | 違う用途が混在して避難経路が複雑 |
ポイント
- 普通のオフィスや倉庫より 火災時の人命リスクがケタ違い。
- 消防法17条1項が 「これらは特に別格!」 と宣言しているため、スプリンクラーや自動火災報知設備などの設置基準がワンランク上になります。
消防法17条の2の5(2号4項)との関係
条文の位置づけ
- 17条の2の5は 「古い建物に残る消防設備をどう扱うか」 をまとめた 経過措置 の条文。
- 原則として**古いままでも許す(従前基準)**のですが、絶対に最新基準が要る設備を列挙して「この設備だけは例外ナシ!」と線を引いています。
2項4号の中身
「ガス漏れ火災警報設備で、特定防火対象物に付けるもの」
については従前基準を認めない──つまり、
古いタイプのセンサーや警報盤はダメ。最新の技術基準に必ず合わせて取り替えなさい。
なぜここまで厳しい?
- 地下街や飲食店はガス配管が多く、一度漏れると爆発的に燃え広がる
- ガス警報は1秒の遅れが致命傷。旧式だと感度・故障率・通知速度が不足
- 特定防火対象物は来客が多く避難誘導も難しいので、設備に「昔のままOK」という“甘え”を許さない
要するに、「危険が集中する場所では“古いから許して”は通らない」という消防法の姿勢をハッキリ示し、
建物オーナー・設備担当者・受験生(消防設備士など)に 「ここが分岐点だぞ」 と念押ししているわけです。
複合用途防火対象物 消防法第8条1項
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに準ずるものとして政令で定める大規模な小売店舗を含む。以下同じ。)、複合用途防火対象物(防火対象物で政令で定める二以上の用途に供されるものをいう。以下同じ。)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
太字部分、複合用途防火対象物の定義をかみ砕くと…
- 防火対象物 … 消防設備を必ず備えなければならない建物や施設(劇場・病院など危険度が高い用途)。
- 政令で定める 2 以上の用途 … たとえば「物販店+飲食店」や「ホテル+劇場」など、別々の用途区分が同じ建物に同居していること。
- 供されるもの … 実際にその用途で使われている(予定を含む)状態。
となります。
つまり 「1 つの建物の中に、危険度が高い 異なる 使い方が 2 つ以上混在しているもの」 が 複合用途防火対象物 ということになります。
具体例 ※用途の区分は消防法施行令別表第一(1 号〜15 号)がベースです。
フロア構成 | なぜ複合用途扱い? |
---|---|
地下:飲食店1〜3F:百貨店4〜10F:ビジネスホテル | 「飲食店」「物販」「ホテル」と政令区分が 3 種混在 |
1F:コンビニ2F:クリニック3F:デイサービス | 「物販」「診療所」「福祉施設」で 3 種混在 |
地下街:商店街地上:映画館・レストラン | 「地下街」自体が特殊+「劇場」「飲食店」が同居 |
なぜ「2 以上の用途」を強調するのか?法律のねらい
火災リスクが複合的に重なる
- 飲食店なら「出火源となる厨房火災」、ホテルなら「夜間就寝火災」、劇場なら「暗所・大量観客」──リスクの種類が増える。
避難導線・管理責任が複雑になる
- 用途ごとにフロア配置や客層が違い、避難経路が入り組みやすい。
- 所有者とテナントがバラバラだと、消防管理の責任分担が曖昧になりやすい。
“ひとまとめ”にして厳しめのルールを課す方が安全確実
- 防火管理者の選任や消防計画の届出、スプリンクラー設置範囲などを**「建物全体で一段階上」に統一**できる。
- テナントごとのバラツキを防ぎ、消防隊も現場で迷わない。
- 単機能ビル … 物販だけ・事務所だけ → 基準はその用途の分だけで済む。
- 複合用途ビル … 物販+飲食+ホテルなど → 複合用途防火対象物として “上乗せ” 基準。
ポイントは「リスクも責任も混ざると一気に上がる」
だから法律は「2 つ以上混ざったら“複合”扱いで、最も厳しいレベルに合わせて守ってね」と言っているわけです。
住宅用防災機器 消防法第9条の2 1項
住宅の用途に供される防火対象物(その一部が住宅の用途以外の用途に供される防火対象物にあつては、住宅の用途以外の用途に供される部分を除く。以下この条において「住宅」という。)の関係者は、次項の規定による住宅用防災機器(住宅における火災の予防に資する機械器具又は設備であつて政令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)の設置及び維持に関する基準に従つて、住宅用防災機器を設置し、及び維持しなければならない。
条文をざっくりと訳すと「住宅として使っている部分がある建物の持ち主・管理者・居住者は、政令で決められた住宅用防災機器を、決められた基準どおりに①取り付けて②いつでも作動するよう手入れしなければならない。」ということです。
住宅部分には住宅用火災警報器などの防災機器を必ず設置し、電池切れや故障がないよう日常的に点検・交換することが法律で義務づけられている。
これは 「命を守る最低ライン」 として、建物の所有者だけでなく住んでいる人にも責任が及ぶ決まりです。
無窓階・地階 消防法施行令10条1項5号
前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる建築物の地階(地下建築物にあつては、その各階をいう。以下同じ。)、無窓階(建築物の地上階のうち、総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階をいう。以下同じ。)又は三階以上の階で、床面積が五十平方メートル以上のもの
用語 | 平たく言うと | どこが危険? |
---|---|---|
地階 | 地面より下にある階。地下1階・地下2階… | 出口が限られ煙がこもりやすい |
地下建築物 | 地面下に全体が埋まっている建物(地下街など) | 各階とも外に直接出にくい |
無窓階 | 地上階でも 「人が出入りできる大きさの窓や扉(有効開口部)」 がゼロの階 | 消防隊が外から進入できず換気も悪い |
三階以上の階 | 4 m超の高さにある階(3F, 4F …) | ハシゴ車の届きにくい高さになる |
床面積50 m²以上 | 約30畳以上の広さ | 人がそこそこ滞在・作業する規模 |
条文をつなげて読むと…
「別表第1の“特定用途”に該当しない建物でも、
その中の 地下・無窓・高層(3階以上) の各階が 50 m²以上ある場合は、
消防設備(自動火災報知設備など)の設置義務対象に入る」
具体例
建物例 | 条文にあてはまる? | 理由 |
---|---|---|
地下1階に 80 m² のトレーニングルーム | ○ | 地階・50 m²超 |
1階に窓のない倉庫 60 m² | ○ | 無窓階・50 m²超 |
4階に 55 m² の事務室 | ○ | 3階以上・50 m²超 |
地下1階に 30 m² の機械室 | × | 50 m²未満なので対象外 |
2階に窓付きの休憩室 100 m² | × | 3階以上でも無窓でもない |
規制のねらい
- 地下や無窓階 → 出火時に煙・熱が逃げにくく 避難が難しい
- 3階以上 → 消防隊の屋外進入が難しく 初期消火が遅れやすい
- 50 m²以上 → 人が相当数利用する広さなので 被害が大きくなる
したがって「用途は普通でも“階の条件”で危険度が上がる場所」は、
特定用途の建物と同じレベルで消防設備を備えなさい という規定になっています。
地階(地下に潜ってる階)
ポイント | 内容 |
---|---|
定義(消防法・建築基準法) | 床面が外の地盤面より下にあり、「床から地盤面までの距離」がその階の天井高さの 1/3 以上潜っている階。 |
イメージ | - 地下1階・地下2階などの“本格的な地下”- 半地下でも 1/3 以上埋まれば地階扱い |
代表例 | 地下街、地下駐車場、地下スタジオ、地下にあるレストランやカラオケ店 など |
なぜ危ない? | ・外気が入らず煙がこもりやすい・出口が限られ、浸水や停電時に閉じ込めリスクが高い |
無窓階(窓がない・役に立たない階)
ポイント | 内容 |
---|---|
定義(消防法施行令) | 地上階のうち、外壁に**“避難や消防活動に役立つ開口部”**が一つも無い階。開口部とは - 直径 1 m 以上の丸が入る窓 - 幅 75 cm × 高さ 1.2 m 以上の扉・引違い窓 など |
イメージ | - ショッピングモールの真ん中に挟まれたテナント階- 倉庫やデータセンターで壁がコンクリートの箱になっている階 |
代表例 | 内部型映画館、ビル中央の無窓オフィスフロア、壁面が隣接ビルでふさがれた階 など |
なぜ危ない? | ・煙の排出と採光ができず視界ゼロになりやすい・消防隊が外から進入・放水できない |
どちらも 煙が外へ逃げにくく、消防隊が入りにくい ため、法律で通常より厳しい消防設備や避難対策が義務づけられています。
用語理解強化ミニ問題集
A 択一式(4択)
No. | 問題 | 選択肢 |
---|---|---|
1 | 「消防隊が火災予防・消火活動の対象とする最も広い概念」は? | A 防火対象物 B 消防対象物 C 特定防火対象物 D 複合用途防火対象物 |
2 | 防火対象物のうち、政令で2以上の用途が混在すると定義されるものは? | A 特定防火対象物 B 複合用途防火対象物 C 無窓階 D 関係のある場所 |
3 | 「住宅用火災警報器」や「住宅用自動消火装置」などを消防法上まとめて呼ぶ名称は? | A 消防用設備等 B 住宅用防災機器 C 危険物 D 舟車 |
4 | 地上階で、直径1 mの円が内接できる窓などの有効開口部が一切無い階を何というか。 | A 無窓階 B 地階 C 地下建築物 D 避難区画 |
5 | 消火器の設置義務者になる「関係者」に含まれないのは? | A 建物所有者 B 管理会社 C テナント借主 D 最寄り消防署長 |
B ○×判定
- 航行中の船舶は消防法上の「舟車」に含まれる。
- 危険物とは、消防法別表第1に品名が載り、その区分の「性質欄」に合う性状を持つ物品を指す。
- 自動火災報知設備・スプリンクラー設備は「消防用設備等」に該当するが、屋外消火栓は含まれない。
- 特定防火対象物は、ホテル・百貨店・地下街など「人が多数出入りし逃げにくい用途」と政令で定められたもの。
- 地階とは、床が地盤面より下にあり、その潜り込みが天井高さの1/3以上の階をいう。
C 穴埋め
- 「消防対象物」のうち、消防設備の設置義務が特に課せられるものを総称して________という。
- 複合用途防火対象物は、防火対象物で政令で定める________以上の用途に供されるものをいう。
- 無窓階・地階・3階以上で床面積________m²以上の階は、用途を問わず特定防火対象物相当の扱いになる。
D 短答(20〜30字目安)
- 住宅用防災機器を設置・維持すべき義務者を条文では何とまとめて呼ぶか。
- 「関係のある場所」という用語の意味を簡潔に述べよ。
E 組み合わせ
用語 | 説明をA〜Dから選んで番号を記入 |
---|---|
16. 舟車 | |
17. 危険物 | |
18. 消防用設備等 | |
19. 無窓階 | |
20. 地階 |
説明群
A 地下で床が地盤面下に1/3以上潜る階
B 車両・端舟・はしけなど船舶安全法が適用されない小型船と車両
C 消防活動や避難に用いる消火器・スプリンクラー・火災報知設備などの総称
D 政令条件を満たす開口部が無い地上階
E 別表第一に品名が載り、定められた性状を持つ可燃・酸化・爆発性の物品
解答・ポイント
No. | 解答 | ポイント |
---|---|---|
1 | B | 消防対象物が最上位の包括概念 |
2 | B | 用途混在(2種以上)=複合用途 |
3 | B | 住宅専用の防災器具をまとめた名称 |
4 | A | 「開口部ゼロ」→無窓階 |
5 | D | 行政機関は義務者でなく監督側 |
6 | × | 航行中は除外、停泊中が舟車扱い |
7 | ○ | 条文そのまま |
8 | × | 屋外消火栓も含む「等」まで覚える |
9 | ○ | 特定用途を暗記(劇場・病院・百貨店等) |
10 | ○ | 1/3 ルールは頻出 |
11 | 防火対象物 | 用語階層の確認 |
12 | 2 | 「2以上の用途」 |
13 | 50 | 50 m² 以上で特定扱い |
14 | 関係者 | 所有・管理・占有者の総称 |
15 | 防火対象物が存在するその土地・空間 | 場所そのもの |
16 | B | 舟車の範囲 |
17 | E | 別表第1で定義 |
18 | C | 消火・避難・通報すべて含む |
19 | D | 開口無しの地上階 |
20 | A | 地階の定義 |