結論から言います
消防設備士の「機械の基礎知識」で、力のつりあいとモーメントの次に押さえるべきテーマが荷重・応力・ひずみです。
ポイントは3つ:
- 荷重:物体に外から加わる力のこと(引っ張る・押す・切る・曲げる・ねじる)
- 応力:物体の内部で荷重に抵抗する力。σ = F ÷ A(力÷断面積)
- ひずみ:荷重によって物体がどれだけ変形したかの割合。ε = ΔL ÷ L
そしてこの3つをつなぐのがフックの法則(応力はひずみに比例する)。さらに、設計上どれだけ余裕を持たせるかを示すのが安全率です。
消火器の容器が内部の圧力に耐えられるのも、消火器を壁掛けするブラケットが重さに耐えられるのも、すべてこの応力と安全率の考え方がベースになっています。
荷重の種類
荷重とは、物体に外から加わる力のことです。加わり方によって5種類に分けられます。
試験では「この場面にはどの荷重が働いているか?」を問う問題が出ます。身近な例をイメージできるようにしておきましょう。
荷重のかかり方による分類
荷重は「どんな種類か」だけでなく、「どうかかるか」でも分類されます。
| 分類 | 意味 |
|---|---|
| 静荷重 | ゆっくりと一定にかかる荷重(例:建物の柱にかかる重さ) |
| 動荷重 | 急にかかったり変化する荷重(例:ハンマーで叩く衝撃) |
| 繰返し荷重 | 何度も繰り返しかかる荷重(例:消火器のレバーを繰り返し握る) |
繰返し荷重は要注意です。1回では壊れない力でも、何万回と繰り返すと金属疲労(きんぞくひろう)で破断することがあります。
応力とは
荷重が加わると、物体の内部には荷重に抵抗する力が生まれます。これが応力(おうりょく)です。
応力の公式
なぜ「力÷面積」なのか? 同じ100Nの力でも、断面積が大きい太い棒と、断面積が小さい細い棒では、材料にかかる負担が全然違います。太い棒なら余裕がありますが、細い棒は大きな負担がかかります。この「単位面積あたりの負担」が応力です。
具体例:断面積が0.01m²の鋼棒に1000Nの引張荷重がかかったとき、
σ = 1000N ÷ 0.01m² = 100,000 Pa = 100 kPa
応力の種類
応力は荷重の種類に対応して名前が変わります。
| 荷重 | 応力の名称 |
|---|---|
| 引張荷重 | 引張応力 |
| 圧縮荷重 | 圧縮応力 |
| せん断荷重 | せん断応力 |
引張応力と圧縮応力は断面に対して垂直に働くので、まとめて垂直応力とも呼ばれます。せん断応力は断面に対して平行に働きます。
ひずみとは
荷重がかかると物体は変形します。この変形の割合がひずみです。
ひずみの公式
ひずみは「変形量÷元の長さ」なので単位がありません(無次元)。これがポイントです。
具体例:長さ2mの棒が引張荷重を受けて0.002m(2mm)伸びた場合、
ε = 0.002m ÷ 2m = 0.001
ひずみが0.001ということは、元の長さの0.1%変形したということです。
フックの法則
応力とひずみの関係を表す最も基本的な法則がフックの法則です。
ばねを思い浮かべてください。ばねは引っ張れば引っ張るほど伸びますが、その伸び(ひずみ)に比例して元に戻ろうとする力(応力)が大きくなります。これがフックの法則の本質です。
重要な注意
ヤング率(縦弾性係数)とは
フックの法則に出てくるE(ヤング率)は、材料の「変形しにくさ」を表す値です。
| 材料 | ヤング率の大小 |
|---|---|
| 鋼(はがね) | 大きい(硬くて変形しにくい) |
| アルミニウム | 鋼の約1/3(鋼より変形しやすい) |
| ゴム | 非常に小さい(簡単に変形する) |
ヤング率が大きい材料ほど、同じ応力をかけてもひずみが小さい(変形しにくい)ということです。消火器の容器に鋼が使われるのは、内部の高い圧力(応力)を受けても変形しにくいからです。
応力-ひずみ線図
材料に荷重をかけていくと、応力とひずみの関係がどう変わるかをグラフにしたものが応力-ひずみ線図です。試験では各ポイントの名称と意味が問われます。
順番は必ず「比例限度 → 弾性限度 → 降伏点 → 引張強さ → 破断」です。この順番を覚えることが試験対策の最大のポイントです。
覚え方のコツ
弾性変形と塑性変形
消火器の容器が通常の使用で元の形を保っているのは、内部圧力による応力が弾性限度の範囲内に収まっているからです。もし弾性限度を超える圧力がかかれば、容器は変形したまま戻らなくなり、最悪の場合は破裂します。
安全率
実際の設計では、材料が耐えられるギリギリの応力で使うわけにはいきません。予想外の荷重や材料のばらつきを考慮して、余裕を持たせる必要があります。この余裕の度合いが安全率です。
安全率の公式
安全率は必ず1より大きい値になります。安全率が大きいほど余裕があり安全ですが、大きすぎると材料が無駄に重くなったりコストが上がります。
具体例:引張強さが400MPaの鋼材を、許容応力100MPaで使う場合、
S = 400 ÷ 100 = 4
安全率4は「材料が壊れる限界の4分の1の力しか使っていない」ということ。言い換えると「4倍の余裕」があるということです。
許容応力の求め方
安全率の公式を変形すると、許容応力を求めることもできます。
具体例:引張強さ600MPaの材料を安全率3で使う場合、
σa = 600 ÷ 3 = 200MPa
この材料には200MPaまでの応力しかかけてはいけない、ということです。
試験の頻出ポイント
公式の全体像を整理しよう
ここまで出てきた公式をまとめます。
この4つの公式はすべてシンプルな割り算・掛け算です。試験では数値を当てはめて計算する問題が出るので、公式を確実に覚えて使いこなせるようにしましょう。
まとめ問題
理解度をチェックしましょう。
【問題1】荷重の種類について、正しい組み合わせはどれか。
(1)ハサミで紙を切る ―― 引張荷重
(2)ロープで物を引っ張る ―― 引張荷重
(3)棚板の上に重い物を置く ―― ねじり荷重
(4)ドライバーを回す ―― 曲げ荷重
【問題2】断面積が0.02m²の棒に4000Nの引張荷重がかかったとき、引張応力はいくらか。
(1)80 Pa
(2)200 Pa
(3)200,000 Pa
(4)8,000,000 Pa
【問題3】フックの法則について、正しいものはどれか。
(1)応力はひずみの2乗に比例する
(2)応力はひずみに比例し、比例定数をヤング率という
(3)応力はひずみに反比例する
(4)フックの法則はすべての応力範囲で成り立つ
【問題4】引張強さが500MPaの材料を安全率5で使用する場合、許容応力はいくらか。
(1)25 MPa
(2)100 MPa
(3)250 MPa
(4)2500 MPa
【問題5】応力-ひずみ線図における各点の出現順序として、正しいものはどれか。
(1)弾性限度 → 比例限度 → 降伏点 → 引張強さ → 破断
(2)比例限度 → 弾性限度 → 引張強さ → 降伏点 → 破断
(3)比例限度 → 弾性限度 → 降伏点 → 引張強さ → 破断
(4)降伏点 → 比例限度 → 弾性限度 → 引張強さ → 破断